無事で良かった ページ43
いろいろ考えながら戦っていると、いつの間にか戦闘は終わってたみたいで。
「……くっ…」
魈さまはかなり苦しかったのか地面に膝をつく。
急いで駆け寄る私。
『魈さまっ!』
「…っ大丈夫だ、問題ない」
『そ、そんな訳ないじゃないですか…!とりあえずあそこ行きましょう……?』
私は魈さまの腕を自分の首に回し、近くの木のよりかけさせる。
「ああ、感謝する」
『あの、魈さま……!…私、私…!』
ごめんなさい、そう言いたいのに言葉が詰まって出てこない。
「…なぜお前が泣いている」
驚いた顔をする魈さまに、私は涙を零しながらいう。
『だって…私が連れて来ちゃったせいで…魈さまが…!本当にごめんなさい…!!』
大丈夫だ、と私を宥める魈さま。でも、でも…
『本当は私、この用事で呼んだんじゃないんです。胡桃が言ってたやつが本当で…私、照れ隠しで……最悪ですよね、こんなの。恥ずかしいからって、人を傷つけるとか…』
今だってそうだ。本当は苦しいのは魈さまなのに、私だけが泣いている。
『本当、最低だ…私』
私は小さくそう呟いた。
その瞬間。
『え…』
私の頭の上に何かが置かれる。
魈さまの手。
そう気づくのに時間はかからなかった。
『魈さま…?』
「確かにお前はくだらないことで我を呼んだ」
『はい…本当ごめんなさい…「だが」……え?』
「我を呼ばずに1人でここに向かっていたら、お前は無事では済まされなかった」
『……』
確かにそうだけど、それでも魈さまは苦しい思いをしたんだ。
『でも、私魈さまの業障がどれほど苦しいか知ってます…。私が傷を負った方が、魈さまは…!』
業障の苦しみは、死すら安らぎに思えるほどのものらしい。
私が傷を負った方が、痛みの大きさ的にも良かった筈だ。
「そんなことはない。我の苦しみとお前の苦しみでは価値が違う」
『…!そんなこと、言わないでください…!そんな筈ありませんから…!!』
少し収まっていた涙がまた流れ出る。
魈さまは私を撫でながら続ける。
「お前が無事で良かった」
『………うぅ…』
私は魈さまの手に自分の手を重ねて、涙をなべく流さないように耐える。
だったら魈さま、私、これだけは伝えたいんだ。
『魈さま、あのね』
「なんだ?」
『私も……魈さまが無事で良かったです…!!』
そう言って私は、精一杯笑って見せた。
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宇琉夜ハル(プロフ) - 6ページ離月ではなく璃月ですよ (2023年3月24日 18時) (レス) @page6 id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
りんご祭り(プロフ) - けんとさん» うおおお!!ネタ切れだったので!!リクエストまじでありがとうございます!!!気合い入れて書きます!!続けてでもなんだろうが構いませんよ!コメントくれるだけで嬉しいです…! (2022年10月13日 23時) (レス) id: bc8f8e995e (このIDを非表示/違反報告)
けんと - 続けてリクエストすみません(泣スカラマシュと絡んで欲しいですワガママすいません (2022年10月13日 18時) (レス) @page37 id: a76f20d172 (このIDを非表示/違反報告)
りんご祭り(プロフ) - けんとさん» いえいえ!こちらこそリクエストありがとうございました〜 (2022年10月4日 22時) (レス) id: bc8f8e995e (このIDを非表示/違反報告)
けんと - ありがとうございます、尊かったです!萌死にするところでした (2022年10月4日 21時) (レス) @page26 id: a76f20d172 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご祭り | 作成日時:2022年9月24日 23時