プロローグ ページ1
ある年の、ロシアのオークション会場
暗い……怖い………
寂しい………ひもじい……
暗い檻の中で目を瞑る
思い出すのは
「A、おはよう」
優しい母の声と父の声
「A、ごめんね」
掠れた母の声と父の声
「どうしてお母さんとお父さんは私を捨てたの?」
暗闇に向かって呟いても、返ってくるのは静寂だけ
小さくなってうずくまっていると、すっと光が立ち込めた
見上げると、大柄な男が立っていて
「お前の晴れ舞台だ。さぁ立て」
と言った。
晴れ舞台?笑わせないで
私は親に捨てられて、人身売買………オークションに出荷されたいわば"家畜"だ
私は生まれつき頭が良い。というか、"サヴァン症候群"という障害のおかげで、自閉症スペクトラムを持ちながらも高い計算力と記憶力がある
自閉症スペクトラムとは、対人関係が苦手な人を表す障害で、さほど私生活に問題は無い
でも、サヴァン症候群は、1度見たり聞いたりしたら絶対に忘れない高い記憶力がある。
だから人身売買の場では、私はとても珍しい商品なのだろう
男について行くと、光り輝くステージが見えた
眩しくて目がくらみそうになりながらもステージへ上がると、大きな歓声が私を包んだ
でも、これは私が有名だから歓声が上がった訳では無い
私が"珍しい商品"だから歓声が上がったんだ
思わず悔しくなって上をむくと、眩しいライトが目を刺激した
周りの音が聞こえなくなるくらい、眩しいライトに集中した
『私、大きくなったらアイドルになって、お母さんとお父さんを喜ばせたいんだ!』
子供の頃、アイドルに憧れた。日本人だった母がよくアイドルの映像を見せてくれて、私もスポットライトを浴びたいと………ステージに立ちたいと願った
でも、今立っているステージは、憧れたステージなんかじゃない………
嗚呼、これから私はどうなってしまうんだろう……
ふっと、息をつくと、大きな歓声が耳をすり抜けた
「10億!10億です!他にいませんか?10億で落札です!!」
10億………私が?馬鹿な人もいるのね………
10億出す馬鹿が今日から私のご主人様か……どんな顔だろう……
観客席に目を向けると、10億の札を上げた青年が目に入った
『っ!』
吸い込まれそうな綺麗な瞳は、遠くから見ても美しく、黄緑色の髪は目立っていて、端正な顔立ちが特徴的だった
それが、巴日和と私の出会いの始まり
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箱推しになりがち人間(プロフ) - 初コメ失礼します。伏見君は多分生徒会ではないと思います。姫宮君の手伝いをしているだけだったと・・・違ったらすみません。とても面白いです。頑張って下さい。 (2022年4月9日 17時) (レス) @page15 id: 9c39c484b8 (このIDを非表示/違反報告)
クテシフォンらるるん(プロフ) - Kazu-mochiさん。初めまして、クテシフォンらるるんです。この度は本作をお読み下さり、ありがとうございます。確認したところ、閣下ではなく、殿下でしたので、修正致しました。ご指摘ありがとうございます!これからも、楽しんでいただけるよう、頑張ります。 (2021年2月22日 20時) (レス) id: 35ac981bdf (このIDを非表示/違反報告)
kazu-mochi(プロフ) - 初めまして!素晴らしい作品をありがとうございます!日和くんの小説は読んでいませんでしたが、とても面白かったです!(あと、茨くんが日和くんを呼ぶときは閣下ではなく殿下ですよ。閣下は凪砂くんです!間違ってたらすみません(;´Д`)これからも応援してます!) (2021年2月18日 16時) (レス) id: 2505b4e935 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クテシフォンらるるん x他1人 | 作成日時:2021年2月11日 7時