49話 ページ49
会ってから、きっと3週間。
その中で実際に会った回数はたったの3回だし、連絡を取りあったのでさえ両手で数えるくらいだ。
早すぎる、と多くの人が言うだろう。
でも、やっぱり。
彼が私にしてくれたことを考えると、心臓が大きくなって、痛いのだ。
そして、彼のことしか考えられなくなってしまうのだ。
｢………なぁ、｣
暫く黙っていると、キヨさんの声がした。
｢は、い｣
｢俺が、こんな期待させるようなこと、友達感覚でお前にやると思ってるのか？｣
｢………｣
キヨさんの質問に対して答えが浮かばない。
私はもう話尽くしてしまった。
｢黙るのかよ………｣
ガシガシと頭をかく音がした。
そして、ため息。
かなりめちゃくちゃなことを言った自覚があるから、嫌われる覚悟もしていた。
ぎゅう、と目を閉じる。
緊張で、周りの音が全く聞こえなかった。
｢……期待させるために、やってるに決まってるだろ｣
分かれよ馬鹿、と言う声が、やけにはっきり聞こえると思って、目を開けると、足元に自分以外の靴が見えた。
そのスニーカーは、と思う前に、顔を両手で掴まれた。
｢あ、｣
両手で頬を包まれて、彼の顔をいやでも見ることになるが、私は抵抗できなかった。
だって、電灯に照らされた彼の顔が、あまりにも、真っ赤なのが見えたから。
その顔で、キヨさんは口を開いた。
｢……ほんと、ありえねえ。ありえねえけど、お前があの時座り込んでいる時に、ただの人助け感覚で声掛けただけなのに｣
｢その時に見たお前が、なんでかかわいいって思ったんだよ｣
｢そ、んなこと｣
｢ありえないってもう俺言った。今も俺思ってる。この3週間ちょっと、毎日考えたよ。おかしいなって、絶対助けたから、なんかそういういい人になったいい気持ちから生まれたもんだって。勘違いだって、｣
でも、とキヨさんはそこで言葉を切る。
頬を包む手が、熱くて、少しだけ汗ばんでいる。
そこから、彼がすごく緊張していることが伝わってきて、私は聞くことしか出来ない。
｢でも無理だった。あの時オムライス食べて、車の中でちょっと話しただけで、気持ちに嘘つけなくなってた｣
｢……｣
｢実況のことだって言うつもり無かったのに、言っちゃったし｣
キヨさんははぁ、と息を吐いた。
その息が少しかかって、ドキドキする。
｢鏡の件をまだまだ引っ張ってるのも、会う機会逃したくなかったからだよ｣
ゆっくりと言われた言葉に、胸が痛い。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです！ (2019年11月21日 18時) (
レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました！キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね！ (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りんご | 作成日時：2019年11月10日 20時
