48話 ページ48
「ねえキヨさん」
酔っ払ってるなぁ、と自覚した。
べらべらと、話す口が止まらない。
「私、キヨさんのこと本当にいい人だと思ってるんですよ」
「……急だな」
「でも、私、だからこそなんですけど、」
………気づいてないといえば嘘になる。
いきなり、急だと人は言うかもしれない。
自意識過剰って、言われても仕方ないのもわかる。
それでも、私は結構気が短いみたいだ。
「キヨさん。あのですね、」
「……なに、」
「期待しちゃうんですよ」
痺れを切らしたキヨさんの言葉を遮って言った。
2人の足は、自然と止まっていた。
運がいいのか、悪いのか。
止まった場所には、公園があった。
私は小さい頃からお世話になっているその公園に足を踏み入れる。電灯の下にあるベンチに、腰を下ろした。
「キヨさん、いい人すぎるんですもん。私に」
入口の辺りにたっているキヨさんの表情は見えない。
私は顔が見えないことをいいことに続けた。
「最初に助けてくれたあと、クッキー渡して終わるだろうって思ってたのに」
「あんな素敵なところにドライブなんて連れてくし」
「私の1番辛いところを激レアなんて言っちゃうし」
「私のコンサートくるし、有言実行して、友達まで紹介しちゃうし」
「……今日だって、タクシーで帰らせればいいのに、わざわざ送ってくれて」
「………………好きに、なっちゃいますよ。20歳の恋愛初心者に、そんなことばっかりすると」
とても、いい人だとは思ってたし。
顔はかっこいいなとも思ってたし。
でも、好きにさせてきたのはそっちだ、と責任転嫁してしまう。
レトルトさんと牛沢さんと、そして、ガッチさんの驚きようで、確信した。
彼は、見知らぬ女性を助けても、きっと、その場限りの関係で終わるのだろう。
そしてきっと、動画やSNSで「そういえば人助けしたから、今日いいことあるはず」とか、ふざけて言う。
意外と、世間はキヨさんのことを知らないから、きっと大したことないように笑って終わるのだ。
だけど、彼は、それだけじゃなかった。
「………ただのいい人じゃなくて、私に対していい人、だったのかな、って期待しちゃうから」
私は座ったまま、俯いた。
彼の気配は、まだある。
「……もし、ただの友達として接してるなら、もうこれ以上やめてください」
「鏡の件も、無しでいいから」
「………私、結構今、苦しいんですよ」
一方的に話し終わり、長い沈黙が続く。
76人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「nmmn」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです! (2019年11月21日 18時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました!キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね! (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りんご | 作成日時:2019年11月10日 20時