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隠し味なんて無かった【狗巻棘】 ページ7

ふわふわの子猫みたいな髪が柔らかくて好きだった。


人懐っこくて、人に流されてついていけない私にも優しく寄り添ってくれて幸せだった。


話を聞いてくれた。


意思疎通ができて、私のつまらなさにも飽きずに笑顔でいてくれて、私本当に幸せだったの。



だけどこの感情は恋みたいに燃えるようなものじゃなくて、ふつふつと湧くような、恋以下のものだった。


自分で割り切れていた分、良かったんだけど彼はそうじゃなかったみたい。



「お前さぁ、自分の意見言わないと棘が可哀想だぞ」



「え?」



パンダ君に言われた昼食後。


お昼ご飯はおにぎりだったっけ。



「とりあえず棘に勘違いさせ続けんなよ〜?A」


パンダ君は恋愛に鋭い。


その分、私はまだまだ鈍いから…あれ。


なんで、なんで、汗止まらないんだろう。


冷や汗と焦り。



喉の乾きが私を追い詰めた。



心当たりがあった?




それとも罪悪感?




なに、これ、苦しい。




「しゃけ」



「と、げ、君」




心配そうなその瞳を見たとき。




「あ、」


呼吸を数秒忘れた。


開いた瞳孔、ああ、ねえ、嘘でしょ。


飾っていた鈍さと純情が食い殺された気がした。


棘くんと私の【好き】を天秤にかけたようで、息ができない。




どうしよう、私、なんて言えばいいの。



「すじこ」



スマホ画面の『どうかした?』という文。



口を開けない。


気付いた自分の愚昧な思考。



大人になったみたい、私。



好きを吊るした風船が割れる音がした。


この言葉はこんなにも重かったっけ?



「あ、のね、とげ、君」



言わなきゃ、言わなきゃ。


わたし、棘くんのことが。




「恋愛対象とし、て…」




ああ、目が、見れない。



「…ううん、何でもない」



自己防衛。


言えなかった。


いつものように。



言えない、きっと同じようになる。


皆と同じ、つまらない私に毒される。




ああ、はやく薄れてしまえばいい。


こんな私を罰してくれたらいいのに。

Laugh me【吉野順平】→←焦燥炭酸水【夏油傑】



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阿津(プロフ) - はじめまして!こちらの作品読ませていただきました!!なんというか、とても素敵でした。言葉一つ一つが心に刺さってくるような感じがとても好きです。上手く伝えられなくてすみません…( ; ; )これからも頑張ってください!応援しています:) (2020年10月16日 10時) (レス) id: 510d3e29ad (このIDを非表示/違反報告)
ぽりすめん(プロフ) - rukiさん» はじめましてrukiさん!評価のことなのですが夢短編集気に入って貰えたらそれで良しのスタンスで行こう、と思えたので評価機能はオフにしました、まあ評価が怖いだけなんですが…コメントありがとうございます、体調に気を付けてしっかり夜寝てくださいね! (2020年4月26日 23時) (レス) id: 46d4b25c7d (このIDを非表示/違反報告)
ruki(プロフ) - はじめまして!!気になったのですが、評価が出来ないようになっているのは故意ですか?気になって夜しか眠れません← (2020年4月26日 22時) (レス) id: 3e8c5a6235 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽりすめん | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年4月25日 19時

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