焦燥炭酸水【夏油傑】 ページ6
「あー、うまく行かない」
空っぽのソーダの缶をゴミ箱に投げてみるもうまく行くはずがなく、甲高いアルミ製の悲鳴を上げて床に転げる。
血を吐くように甘い水が飲み口から落ちる。
「こら、行儀悪いよ」
そう言ってデコボコの缶を持ち上げる夏油。
まとめ上げられた髪に、おくれ毛が一束。
変な前髪なんて言われてる理由が分かる。
男性のくせに人妻感がある、なんてやつ。
「ちゃんと捨てないと、女の子でしょ」
「立派な女性です〜」
「じゃあ尚更だよ」
ある任務以来ぎこちない笑顔が張り付いてとれない彼が、またその表情を見せる。
もう一本どう?という問いに一緒にいられるのならなんでも、と苦手な炭酸を買った。
飲みにくくていい、舌が痺れるくらい、構わない。
ただ、今、何かを話さないとぎこちなくて、消えちゃいそうで。
「げと…」
「私は猿が嫌いだよ」
急にそんなことを言われ、私は息を呑む。
淡々と放たれる言葉。
汗が滲む額に細い黒。
揺蕩う熱が私達を溶かしていく。
行き場のない視線は私のつま先に行った。
乾いたセミの声。
落ちて
「私と一緒に逃げてくれるかい?」
ねえ、あのとき私、拒絶しなきゃ良かった?
そうしたら救われてた?
貴方の、大義に、私。
「ねえ、夏油、なんか、変だよ」
「…そうか」
「うん…」
ねえ、わたし、もう一度あなたに会いたい。
あのとき、わたし肯定していたら良かった?
手をとって、互いに。
ああ、でも。
それで私達は救われない、知ってる。
乾く喉に焦燥の混じる脳。
わかってる、甘え、知ってた。
私はまだ、サイダーを飲み干せないでいる。
63人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
阿津(プロフ) - はじめまして!こちらの作品読ませていただきました!!なんというか、とても素敵でした。言葉一つ一つが心に刺さってくるような感じがとても好きです。上手く伝えられなくてすみません…( ; ; )これからも頑張ってください!応援しています:) (2020年10月16日 10時) (レス) id: 510d3e29ad (このIDを非表示/違反報告)
ぽりすめん(プロフ) - rukiさん» はじめましてrukiさん!評価のことなのですが夢短編集気に入って貰えたらそれで良しのスタンスで行こう、と思えたので評価機能はオフにしました、まあ評価が怖いだけなんですが…コメントありがとうございます、体調に気を付けてしっかり夜寝てくださいね! (2020年4月26日 23時) (レス) id: 46d4b25c7d (このIDを非表示/違反報告)
ruki(プロフ) - はじめまして!!気になったのですが、評価が出来ないようになっているのは故意ですか?気になって夜しか眠れません← (2020年4月26日 22時) (レス) id: 3e8c5a6235 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ