24日のリビングデッド【夏油傑】 ページ39
夏の夕暮れ。
傑と付き合って数年目、疲れたような顔の彼に今日、呪われた。
これが嬉しいのか悲しいのかは今になってもわからない。
ただ、心臓に植えられた呪いが生きていたのが喜ばしくて、それだけは分かった。
歳に相応しくないような手の繋ぎ方をして寮への道を歩く。
アイスを齧った唇がひりひりと、冷めた熱を放って痛い。
冷たい左手と、温かい右手。
当たり前のように車道側を歩く彼が、そこはかとなく愛おしい。
「実は最近、愛の呪いを知ったんだ」
「何言ってるの、愛は呪いだよ」
「違うよ、ちゃんとした呪い」
そう言って屈んで私の目を見る傑。
金色、差し込む斜陽の色、夏を溶かしてしまったような慈しみに溢れた色。
それが今にも溶けて零れそうなくらい揺らいで、震えるくらい愛おしい。
私の頬に手を伸ばして、唇に触れる。
ちっとも私に触れてくれなかった彼が残した呪い。
キスなんて今日がはじめてだった。
探し当てるように、用心深く熱く。
唇で唇をこじ開けて、ぬるりと触れてゆく舌が冗談だと思うくらい優しくまとわりついて離れない。
私の手からは棒の感触は消えていて、代わりに傑のシャツをぎゅっと掴んでいた。
沈んで焼けてしまいそうな奥深い瞳孔が大きく開いてゆく。
いつ終わるかも分からない愛情深いキスに腰がくだけそうになる。
汗のにおい、呪いのにおい。
いつの日か別行動が多くなった私たちのにおい。
私は貴方を愛してる。
貴方が失踪したこの次の日も愛してた。
ひとごろしを、呪いをかけた貴方を。
連れ出してほしかった、貴方の目が本当だって信じたかった。
12月24日。
貴方がいなくなった日。
悟に抱きしめられたあのとき。
貴方以外の熱はないと、焼けて焦がれるような恋慕が冷えてゆくのがわかった。
呪いは、消えない。
貴方がかけた呪いは肚の中で生きている。
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阿津(プロフ) - はじめまして!こちらの作品読ませていただきました!!なんというか、とても素敵でした。言葉一つ一つが心に刺さってくるような感じがとても好きです。上手く伝えられなくてすみません…( ; ; )これからも頑張ってください!応援しています:) (2020年10月16日 10時) (レス) id: 510d3e29ad (このIDを非表示/違反報告)
ぽりすめん(プロフ) - rukiさん» はじめましてrukiさん!評価のことなのですが夢短編集気に入って貰えたらそれで良しのスタンスで行こう、と思えたので評価機能はオフにしました、まあ評価が怖いだけなんですが…コメントありがとうございます、体調に気を付けてしっかり夜寝てくださいね! (2020年4月26日 23時) (レス) id: 46d4b25c7d (このIDを非表示/違反報告)
ruki(プロフ) - はじめまして!!気になったのですが、評価が出来ないようになっているのは故意ですか?気になって夜しか眠れません← (2020年4月26日 22時) (レス) id: 3e8c5a6235 (このIDを非表示/違反報告)
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