梅雨雷、甘く染め【吉野順平】※if ページ27
私が生まれてニ十回目の梅雨。
そうやって例えると私の人生は何回だって季節が巡ってゆく、なんて当たり前。
記念日はたいして祝ってなんていないけれど、季節が過ぎてゆく度に何回目か、と考える。
真っ暗な部屋。
目が悪くなるのなんてお構いなしに映画を見る。
順平はこの映画を知ってるのかなあ、大学の教授と少女の話。
結構有名かもね、センシティブだけど。
響く雨音。
ちかちかと光る画面には、けらけらと土に汚れた少女の姿。
恋って難しいね、なんて私も映画の男の人もどうかしてる。
順平は疲れたようにお酒を口にする。
ねえ、あとちょっとしたら悠仁たちも成人するんだよ、順平。
「ね、それ私の」
「ごめん、間違えた」
缶を置いて、少し戸惑いながら私のお酒を飲む。
遠くに響く雷の音を合図に、覚悟を決めて噛みついた。
足でテレビの電源を切って
何度も、何度も。
暗くて顔が見えないから、後頭部の柔らかな毛と同じシャンプーの匂いを頼りに何度だって何度だってキスをする。
梅の味がする口内と、涼しい部屋に似合わない熱い吐息。
愛し合うのに理由なんてない。
ただしたい、触れたいから。
いつ死ぬかわからないから、いつだって躊躇なく触れ合う。
ねえ、私たちは幸せだったら愛しあうときに断ることだってあったかな?
この唇の熱を抑えるときに別の方法だって使えた?
わからない、知らない。
わたしはいつだって何も知らない。
「泣いてる」
「つらいもん」
わからない。
もう一度キス。
情慾のにおいと、私のぬるい熱を帯びた首元の鉄の輪。
生きてくうちに幸せなんていっぱい見つけてあげる。
順平の不幸なんて、いくらだって他人事にしてあげる。
ねえ、愛は止まないこの雨のように。
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阿津(プロフ) - はじめまして!こちらの作品読ませていただきました!!なんというか、とても素敵でした。言葉一つ一つが心に刺さってくるような感じがとても好きです。上手く伝えられなくてすみません…( ; ; )これからも頑張ってください!応援しています:) (2020年10月16日 10時) (レス) id: 510d3e29ad (このIDを非表示/違反報告)
ぽりすめん(プロフ) - rukiさん» はじめましてrukiさん!評価のことなのですが夢短編集気に入って貰えたらそれで良しのスタンスで行こう、と思えたので評価機能はオフにしました、まあ評価が怖いだけなんですが…コメントありがとうございます、体調に気を付けてしっかり夜寝てくださいね! (2020年4月26日 23時) (レス) id: 46d4b25c7d (このIDを非表示/違反報告)
ruki(プロフ) - はじめまして!!気になったのですが、評価が出来ないようになっているのは故意ですか?気になって夜しか眠れません← (2020年4月26日 22時) (レス) id: 3e8c5a6235 (このIDを非表示/違反報告)
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