キルミーアンドウェイト【呪術廻戦】【短編集】

深海より愛をこめて【五条悟】 ページ11

私の人生をどれだけ貴方にあげたって、貴方はそのうちの５分もくれやしない。


会いたいって願ってもあってくれないくせに。


だから、傷付くのが怖くて苦しいから、もう会わないって忘れちゃおうって。


それなのに期待しちゃって、本当に馬鹿みたい。

貴方から連絡が来て、夢を見て、会えないって知って、想いを殺すように泣く。


心臓のあたりに剣を刺すように泣く。


私を見て。


何処にも行かないで。


だけど、こんな今日明日が何気なく過ぎて行くのは貴方のお陰だと知ってまた想いを刺し殺す。


今日までに私は何人もわたしを殺してきた。


貴方を好きな私を。


愛されたいと思う私を。


危険にさらされたっていい、私貴方と同じ世界が見たかった、こんな叶わない願いくらい知ってる。


魔性の貴方に出会わなきゃ良かった。

無垢になって、知らなきゃよかった。



ねえ、わたしまだ貴方のことが忘れられない。



「似合ってるよ」


そう言って白く飾られた私の耳元に触れる。

抵抗したいわけじゃない。


最後に、ねえ、神様これくらいの冒涜許してよ。



「本当は僕が迎えに来てあげたかったんだけど、ごめんね」


いつもそう。


爆弾を落として、治らない傷を負わせて帰っていく。

ぐじゅぐじゅで治りかけの傷にかさぶたができるとまた帰っていく。




「ごめんね、愛してる」



それだけ。


今日まで、初めてではないけれど、そのキスをした。

長く押し付けられた唇。


涙は止まらない、メイクも酷い。



これで最後、塩の味がする。



「酷い顔させてごめんね、これから式なのに」



謝る貴方、連れ出してはくれない。


深い青の瞳。


私の首にかけられた青いネックレス。


海より、愛をこめて。



わたし、貴方といられない。


こんな世界いらない。



連れ出してくれればよかった。

ふたりで逃げ出したらよかった。




許嫁だからと遠慮してくれないで接してくれれば良かった。

深い海のような悲しみ。


Kill me and wait．


私を殺して待っていて。


触れられた痕はまだ熱い。


貴方のその手で、その指で一緒に逃げ出したい。


ああ、私の人生を捧げたって貴方は受け取ってくれない、知ってる。

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