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好奇心に猫【虎杖悠仁】 ページ1

私のからだは食べてきたもので作られる。


飲み込んだソーダと舐めとったアイスクリーム。

噛み砕いた氷と一緒に私の体を巡る。



食べたもので生きている。


だけど愛なんてものは一切口に入れたことがなくて、戸惑った。

私はそれが欲しかった。


後輩の悠仁君は本のページを捲ると驚いたように呟く。

声は私と部屋の壁紙に染み込んで落ちていって。




「あ、血」



紙で切れた指先を眺めていた彼はどうしよ、というふうに私を見つめて笑う。


血はぷっくりと赤い実のように膨らんで今にも弾けてしまいそうだった。


舐めれば治るよ、なんて言葉を飲み込みたくて俯いてみる。



声に出したら行動に移しそうで怖かった。



だけど好奇心が強かった私は、人生ではじめての相手の血の味を確かめたくて、乾いた唇を濡らした。



気持ち悪いって思われたらそれまでだけど、いいや。




「舐めたら治るよ」



「ほんとに?」



少し疑って、人差し指を咥えようとする悠仁君の腕を掴んだ。


男の人らしい手首は握るだけで精力が付きそう。



「悠仁君じゃなくて、私が」



「へっ?」


指先の朱を唇にあてて、なぞる。


生暖かい鉄の味。


触れるほど溢れてくる。


こんなに酷いんだ、珍しい。



「っ、あ、せんぱ、」



「悠仁君」




きっと君は興奮している。


鼓動が速くなって血がランナーみたいに巡っている。

だからこんなに血が止まらない。



指も耳も頬も赤い。

飾っていた平穏が羞恥に飲まれて殺された。


偽らなくていいよ、君は私が好き。



「悠仁君は愛の味を知ってる?」



「俺、は知らないけど…先輩は?」



「今知った、だから悠仁君も今から知ろう」



強制的な愛の呪い。


噛んだ唇から滲んだ血を伸ばして、その唇に噛み付いた。


薄い器を私の愛で満たしてしまおう。



これは呪いだよ悠仁君。

私から離れられない呪い。



「せんぱい、おれ…」



君の唇に咲いた黒い百合。


その味を忘れないで悠仁君。



す、から続く言葉を遮るように、もう一度。



私が残したフロートのコップのふち。


水滴がふたつ、溶け合ってすべり落ちた。




この中で熱いのは私達だけ。


愛の味を知った罪深い私達。




人を呪わば穴ふたつ。



ねえ、呪い合って同じ墓に入ろうよ、悠仁君。

後からいちばんめ【伏黒恵】→



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阿津(プロフ) - はじめまして!こちらの作品読ませていただきました!!なんというか、とても素敵でした。言葉一つ一つが心に刺さってくるような感じがとても好きです。上手く伝えられなくてすみません…( ; ; )これからも頑張ってください!応援しています:) (2020年10月16日 10時) (レス) id: 510d3e29ad (このIDを非表示/違反報告)
ぽりすめん(プロフ) - rukiさん» はじめましてrukiさん!評価のことなのですが夢短編集気に入って貰えたらそれで良しのスタンスで行こう、と思えたので評価機能はオフにしました、まあ評価が怖いだけなんですが…コメントありがとうございます、体調に気を付けてしっかり夜寝てくださいね! (2020年4月26日 23時) (レス) id: 46d4b25c7d (このIDを非表示/違反報告)
ruki(プロフ) - はじめまして!!気になったのですが、評価が出来ないようになっているのは故意ですか?気になって夜しか眠れません← (2020年4月26日 22時) (レス) id: 3e8c5a6235 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽりすめん | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年4月25日 19時

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