金のつま先、切り落とせたのなら ページ3
ある日の午後、照りつける太陽の下、小さな悲鳴が大富豪の邸に響いた。
パリッ、と何かの拍子で金で縁取られたティーカップが割れたのだ。
それがヘマをした使用人のせいでは無いにしろ、どちらかが折檻を受けねばならないのは明白だった。
「ぶつかって来たのに片付けを私にさせるなんて」
引っ込み思案な使用人の性格を分かっているからか、誰かが来ないうちにもうひとりの女はカップの欠片を拾い集めた。
折檻だけではなく、これを弁償、なんて言われたらたまったものではない。
指が擦り切れるのも無視して女は拾い集めた。
少女はどうしていいか分からず、彼女のように破片を拾い集め、スカートの布の上にひとつひとつ置いていった。
別に珍しいことではない。
そんなこと、大富豪側からしたらお気に入りの骨董品でもない限りわざわざ叱りつけることは無い。
カリムもそうだった。
「喧嘩か？」
「そうみたいだな」
カリムはさほど興味も無かったが、女中がやって来たところでとうとう女の罵倒は酷くなっていった。
食器を割っただけなのだが、折檻を怖がるあまり女は少女に責めるような口調で謝罪を求めた。
「おやめなさい、カリム様がいらっしゃるのですから…」
女中が叱りつけるも、女の烈火のような焦りと糾弾は止まらなかった。
「貴方がぶつかって来たっていうのに、何よその顔は！片付けまで私にさせておいて被害者にならないで頂戴！」
鞭は、怖い。
「そういえば貴方、使用人の娘のくせにカリム様の語り部だったわよね？一体どんな手を使ってアジーム様を誑かしたのよ、やっぱり噂どおり貴方の母親は娼…」
「なあなあ、何があったんだ？」
女があらぬことを口走る前にカリムはその間に割って入った。
震えながら呪いのように謝罪を続ける語り部の手をきつく握り、女に視線を向けた。
女中はカリムとジャミルを見ると胸を撫でおろし、説明を始めた。
カリムは頷きながら
「気にすることじゃないぞ、どうせそのうち割れるんだからな！」
と女に言うと、女中とともに女をこの場から去らせるように言った。
ジャミルは相変わらず胃が痛い。
「あ、ありがとうございます？」
「ん？別に気にすることじゃないって、なぁジャミル！」
「俺に聞くな」
安堵した語り部がお茶を持ってくる、次は失敗しないと席を外した。
「ジャミル、あの使用人のことなんだけどな」
「ああ、解雇するのか？」
「まぁな！」
ぽとり。
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ぱりすめん(プロフ) - 三毛猫さん» 了解です (2020年8月23日 14時) (
レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫 - めっちゃめちゃよかったです吐血案件。ただひとつ、少しヤンデレ気味なので注意書きしたほうがいいかと。地雷の方もいるので… (2020年8月23日 2時) (レス) id: 33555fdbbd (このIDを非表示/違反報告)
ぱりすめん(プロフ) - 白くまさん» わあッ！！ありがとうございます！カリムくゆのヴィラン感たまらん…この後は想像におまかせします、ご愛読ありがとうございました！ (2020年8月10日 12時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
白くま - 勝手にカリムくんは光属性だと思ってましたがヴィランの彼はとても魅力的&尊くて私の胸にぎゅんぎゅんきました！読み終わった後の余韻と興奮が収まりきらずコメントさせて頂きました！とても読みやすく面白かったです！素敵な作品を有り難う御座いました( 〃▽〃) (2020年8月10日 11時) (レス) id: 135f1555b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - ぱりすめんさん» もちろんですｯ！！！！！カリムくゆに宴開いてもらいましょうｯ！！！！！！！！！！！ジャミルの負担やばいですが！！← (2020年8月9日 22時) (レス) id: 023bb29577 (このIDを非表示/違反報告)
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