魔王への一歩 ページ19
『···ゲルドさん 師匠 後は任せます』
私は交戦中のゲルドを見た
実力差は明白
先程まで強がっていたショウゴは命乞いをしている始末
「そうじゃな 此奴は儂らが仕留めるわい」
私はハクロウにコクリと頷き､翼をバサッと広げ飛び立った
···急がないと
«なんでだ？»
今頃リムルは戦場に向かう頃だろう
リムルが負けるなんて到底思っちゃいない
二万人の軍勢と言えど､リムルの前には塵に等しい
私が恐れているのは勝利した「その後」だ
リムルが魔王になり､その膨大な力に耐えきれず意志なき邪悪な魔物になってしまったら
···その時は私達がリムルを処分しないといけない
それだけは絶対に避けたい
リムルは自らが怒りに任せて力を振るう所を見られたくないと言っていた
だからリムルが戦場に行くその前に
私はスピードを上げて魔国連邦に向かった
魔国連邦の端､ブルムンドの国へと繋がる道に仮面をつけたリムルは立っていた
よかった 間に合った
『リムル!!』
私はゼェゼェと肩で息をしながらリムルの目の前に降り立った
「···早かったな 疲れただろう 少し休むといいよ」
仮面を被っているリムルは感情が読み取れない
今､何を思っているのだろう
『···これ､借りてた刀
一応綺麗に拭いておいたから
大事な刀､貸してくれてありがと』
リムルは私から刀を受け取り､腰に提げる
そして後ろを振り返り､空を見上げて大きな蝙蝠の羽を広げた
その後ろ姿が悲しく見える
私は無意識的に後ろからリムルをギュッと抱き寄せた
「···」
普段なら何かしら慌てたり､恥ずかしがったりするリムルが何も反応しない
それが､私の心臓を締付けるような感覚にする
『···私､リムルの事好きだよ』
思わず口が滑った
自分でも気づいていなかった
いや､気づかないふりをしていたんだ
「俺も好きだよ」
リムルは変わらないトーンで淡々と答える
分かってる
リムルの言う「好き」は社交辞令のようなもので､私の「好き」とは意味が違う
『···だから､だから絶対に
··· 生きて､帰ってきて』
リムルの死は､意志や自我が崩壊した時
唯の化け物と成り果てる事は私にとって「死」を意味する
「···あぁ」
リムルは一言そう言い蝙蝠の羽を広げ､飛び立つ
行き場のない腕が先程と違い､冷たく感じた
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千尾(プロフ) - 最初から読みたいんですけどどこに行けばいいでしょうか？ (2021年3月18日 3時) (
レス) id: 0b1187e4b4 (このIDを非表示/違反報告)
セイ - ありがとうございます！ものすごく励みになるコメントめちゃくちゃ嬉しいです！ (2020年2月8日 1時) (レス) id: bc72cc58ab (このIDを非表示/違反報告)
藍羽 - 頑張ってください！楽しく読ませてもらってます、応援してます。 (2020年2月5日 0時) (レス) id: 779fc880ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セイ | 作成日時：2020年1月26日 2時
