【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ47)

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271葉ページ47

「鏡花ちゃん。君が望むなら、殺しで生きる道を用意してやってもいい。けど君の苦悩は君だけのものじゃない」

治がインカムに手を当ててそう云う。私は今日も手袋を身に付けている拳を握って、その言葉を引き継いだ。

『“成りたいモノと向いているモノが違う時人は如何すればいい？”
生き方の正解を知りたくて誰もが闘ってる。何を求め闘う？如何やって生きる？答えは誰も教えてくれない。私達にあるのは迷う権利だけなんだよ。
溝底を、宛もなく疾走る(はしる)───迷ヰ犬(ストレイドッグ)のように』

《白鯨》
一方白鯨では、フィッツジェラルドとの戦いが幕を下ろそうとしていた。

「人虎ッ！！」

「……うおおおあおおおッッッ！！」

羅生門の足場から跳躍し、握りしめた拳を振りかぶる。その拳に羅生門が纏いつき、大きな黒爪を形作った。

「(若し彼の云う通りなら。
若し今日、この荷物を降ろしても善いのなら、僕は───)」

───《月下獣羅生門・虎叢》

瞬間、敦とフィッツジェラルドを中心に、空気が爆ぜる。
フィッツジェラルドが吹き飛ばされ、敦も気が抜けたかのように落下し、羅生門が解除されると同時に倒れる。芥川もまた限界を迎えていたのだ。

「(限界だ……もう腕も上がらない…若しこれで、奴が立ち上がったら……)」

そう顔を上げた敦と芥川の視界に入った、土煙の向こうに見える人影。
───フィッツジェラルドだった。

「勝ったぞ…ゼルダ…」

然し、異能痕が消滅しそのまま後ろへと倒れる。

「待っていてくれ…もう一度、君に幸福を＿＿＿」

そのまま白鯨から落下しフィッツジェラルドの姿は見えなくなった。ハッとした敦がその後を追おうとする。

「そうだ、制御端末……ぐわぁッ」

「愚者め……最後の攻撃の刹那、奴の背広から抜き取った」

芥川が羅生門で制御端末を持ち上げてみせる。敦がそれを慌てて手に取った。

「は、はは、早く止めないと！後三秒！？」

カウントダウン残り一で、何とか止めることに成功したのを確認し、思わずペタンと座り込む。そんな中芥川が敦の顎を蹴り飛ばした。

「！？」

「今すぐ四つ裂きにしてやりたいが、生憎力を使い果たした。今は此れで我慢しておけ」

「お前……次会ったら憶えとけ……」