【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ33)

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「全く…ここ数年で最低の一日だよ」

「何で俺がこんな奴と…」

とかいいつつも、同時にドアノブへ手が伸びる。

「俺の隣を歩くんじゃねえ」

「中也が私の隣に来たんじゃあないか」

『はいはい通りまーす！』

バチバチと火花を散らす二人の間を通って中へ入る。
最初こそあの双黒が……！ってなったけどさ、三年ぐらいやり取りに付き合ってるともうお腹一杯になるのよね、うん。

『ヴッ……ッ』

「お前なあ…貧弱すぎかよ」

私が全力でも開かなかった扉を軽く片手で開ける中也。解せぬ……

「流石脳筋蛞蝓！」

「うるせェ青鯖！。太宰、『ペトリュス』って知ってるか」

「目玉が飛び出るほど高価い(たかい)葡萄酒」

「手前らが組織から消えた夜、俺はあれの八十九年ものを開けて祝った。そのくらい手前にはうんざりしてたんだ」

『……それ、美味しかった？』

「美味かった」

『……あれ、だいぶ昔に治が千円ぐらいの安いやつにすり替えたって云ってたけど』

「……はァ！？」

「そういえばそんな事もしたねぇ。そういえば、あの日記念に中也の車に爆弾仕掛けたなあ」

「あれ手前かっ！！てかすり替えたってどう云う事だ！？」

ギャーギャー騒いでる間にすったすったと私が下へ降りて行く。

「待ってよA～」

正直、それより早く九作君を助けたい。階段を駆け下りると、扉を開けた。

『居た…』

木の根に絡み付かれた状態で気を失っている。痛覚を刺激されすぎて限界を迎えたのだろう。

『硬っ……まあ何とかなるか』

四苦八苦しつつもなんとか木の根を断ち切っておぶった。

「相変わらず甘え奴だなお前」

『私は私なりにやりたいことをやる。気分が乗ればやるし、乗らなければやらない。何人たりとも私は指図される筋合いはないよ』

きっぱりと断言して、今度は上に登る。

「おいクソ太宰、人形寄越せ」

「駄ー目。これは万一に備えて私が預からせてもらうよ」

「あぁ、糞！昔から手前は俺の指示を露程も聞きゃしねぇ。この包帯の付属品が」

「何だって？中也みたいな帽子置き場に云われたくないね」

あー、始まったわ……もう止めないかんな、橋本○奈……

「この貧弱野郎！」

「ちびっこマフィア」

「社会不適合者！」

「フッ、その程度の悪口じゃそよ風にしか感じないねえ」

「ぐ……手前のAと会う前の話、云うぞ」

「ふん、そんな事……それは止めてくんないかな？」

治さんあなた何してたの！？