【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ28)

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「う……ッ」

『嗚呼、目覚めた？』

「確か俺は、社長と太宰の会話を聞いた後に───」

『カミングアウトの衝撃に耐えきれずにバタンキューしたね』

「そ、そうだ月影！！太宰が元マフィアというのは本当なのか！？」

『……国木田君、またバタンキューしない？』

「……努力する」

スッと目を逸らしつつそう云った国木田君を信じて、私は追加事項を知らせる。

『治だけじゃなくて、私と織田作も元マフィアだよ』

「……は？ま……待て待て。お前と織田が！？マフィア！？」

『そう。マフィア』

じーーーーーーーーっと私のことを見た国木田君は、馬鹿馬鹿しいといった具合に首を横に振った。

「嘘だろう？太宰はともかく、お前ら二人が……」

『本当なのよねー、それが』

差し出したのは例の二枚の写真だ。

『これ。私と治が付き合い始めた日の写真。六年前とかかな』

あの花火大会の後みんなで撮った写真だ。私と治を始め、森さんや中也に姐さん、梶井君といった面子もバッチリ写っている。

「これは爆弾魔の梶井基次郎…？それにこれは、あの幹部の……！」

「あ、懐かしい写真じゃない」

「何だ？」

ひょっこり現れたのは治と織田作だ。

「太宰は昔からこの巻き方だったのか」

「そうだよ。知っての通り抜けてからは止めたけどね」

「……ひょっとしてこれが太宰？」

『そうだね。その隣が私』

「何というか、変わっていないなお前ら……否、太宰は同じ様で違うか」

「そう？私変わっていないと思うけどなあ」

『確かに治は丸くなった』

「嗚呼。昔はもう少し冷たかったな」

「ええ！？酷いなあ二人とも」

『ふふ、冗談冗談。まあ仕事中は酷かったけどね、うん』

二回殴って五発撃つは知ってても怖かったです。(真顔)

「お前ら……」

『まあそうは云ってもマフィアらしいマフィアしてたのは治と私だけだよ。
織田作はマフィアなのに絶対殺しをしなかったから』

「そのせいでマフィアでも使い走りみたいな扱いされてたねえ」

「……もう突っ込まん」

『それが賢明かな。叩けば叩くほど国木田君の頭痛の種が増えるだけだよ？
……却説。そろそろ動き出さないとね』

「何のだ」

私は扉に手をかけ振り返り、笑って答えた。

『“茶会”の準備』