【3年A組】Espoir 2 - 卒業 - (ページ4)

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053話ページ4

22時30分。

先生が倒れて数時間が経った。

未だに目を覚ます気配はない。

茅野「A、タオル濡らしてきた」

『ごめんね、ありがとう』

茅野「ううん、いいよ」

全てを打ち明けようといった先生が倒れた。

一部の生徒以外は教室でそれぞれ時間を過ごしている。

茅野「先生、ずっと具合悪かったのかな」

宇佐美「そんなそぶりは見せてなかったけど……ねぇ、あんたは気づいてたんでしょ」

宇佐美さんは後ろで立っている甲斐君の方を向く。

一瞬、こっちを向くかと思ったけど

その目線は私を通り過ぎた。

甲斐「どっちにしろ、こいつはこれで終わりだ。つか、藤枝も気づいてたというか知ってたんだろ」

茅野「え、そうなの？」

『うん、まぁね。美術室で絵描いてた時間もあるから、その時に』

小宮山「準備室まだ開かないのかな」

小宮山さんは先生のノートPCを見ながら足を組んで座っている。

こんな状況なのに……いや、こんな状況だからか。

今が逃げるチャンスでもあり、里見君や中尾君を探すチャンスだもんね。

美術準備室前では、数名が扉を開けようと

奮闘しているようだった。

逢沢「ドアには鍵がかかってるし電流も流れてるから、そう簡単には開かないよ」

『熱は引いてきたかな……』

茅野「ねぇ、A？あのさ…」

石倉「おぉ！ちょっと開いたぞ！このまま扉が開けば、ケータイ取り戻して助けが呼べる！」

花岡「確かに！」

さくらが何か言おうとした時、美術準備室の扉が少し開いたと

みんながノートPCに集まり騒ぐ。

最悪の場合、中尾君たちに引き止めてもらおう…。

「リモコン貸して下手に触ると爆発するよ」と言った逢沢君に石倉君がリモコンを押し付ける。

……うん、これは内通者確定だね。

宇佐美「Aはさ、逃げたくないの？」

『私は残るよ。目的気になるし』

茅野「確かに…先生、何か言いかけたままだったもんね」

すると、先生の胸ポケットに入ったケータイが鳴る。

『私が出るよ』

“I”と表示された画面を確認し、五十嵐さんからだと悟った。

耳に当てると“今、郡司がフェイク動画の件を探ってる。これもお前の計画通りか？”という声が聞こえたので

親指で耳にケータイを当てたまま通話を切った。

みんなには気づかれないように。

『切れちゃった』」

石倉「んなことより！ケータイだよ、ケータイ！これで助けを呼べばいいんだよ！」

先生のケータイを石倉君にあっけなく取られた。