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130.月光 ページ11

カノは電気を消しに立つと、布団上に座り、こちらを見た。

月明かりが、カノと白い布団を照らす。

目に熱が灯っていて、どくり、と胸が跳ねる。


「おいで。」


熱っぽい声色に、体が小さく震えた。


ゆっくりと、カノの横に腰を下ろす。

カノは、私の頰に手を添えると、

「ほんとに?いいの?」

と、聞いた。

答える代わりに、唇を軽くくっつければ、カノは照れ臭そうに少し笑って、

もう片方の手を私の腰に回し、唇を深く押し付けた。


深く絡んでいく唇に、酸素を奪われる。優しく、ゆっくりだけど、

波のように迫り来る感覚にとまどい、カノの背に腕を回した。

ときどき唇を離され、その度に瞳が絡む。

熱っぽく、そしてすこし余裕がなさそうな目は、私を捉えて離さない。

「か、の…」

ふと、名前を呼んだ。

「修哉。」

だだっこのように、すこしだけ口を尖らせたカノは、そう呼ぶようにと

自分の名前を呟く。

「しゅうや、ん、」

昔のように修哉と呼べば、また深く唇が重なった。

溺れそうで、必死にしがみつく。

カノの手が背中をつうっとなでる。

そして体が、布団の中に沈んだ。


はらりと濡れた髪が布団に散る。

こちらを見下ろすカノは余裕のない顔をしていた。

「修哉、」

手をカノの頰にあてると、

「Aが、きれいで、ぼく暴走しちゃいそ。」

と、困ったように言う。

そして、カノの体がゆっくりと近づいてくる。

「大事にするよ。」

と、耳元で囁かれ、涙が溢れた。

カノの背中に手を回して、必死にすがりつく私にカノはときどき愛の言葉を耳元で

囁いては、たくさんのキスを降らせる。

お互いの体が熱くて、でもとても、幸せな夜だった。




まどろむ意識の中で、


「A、ずっと、一緒に。っ…。」



カノの泣きそうな声が聞こえた気がした。

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yaku - 泣いてしまいましたぁ(泣)お話が素晴らしすぎて…本当に面白くて、素敵な作品でした!完結まで沢山の苦労があったと思いますが、その苦労あってか本当に素晴らしい作品です!完結までお疲れ様でした! (2022年3月25日 0時) (レス) @page14 id: 4fe25e4533 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの宇宙人(プロフ) - 6年ぶりに開いてみたら、完結していて驚きました。私が小説を創作するきっかけになった作品だったので、とても嬉しい気持ちになりました。この作品を作ってくださってありがとうございます!お疲れ様でした! (2021年9月27日 0時) (レス) id: ca2c0a8931 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(ログインできなくなってしまいましたが本人です) - とまとさん» 連載当初からなんて、嬉しすぎます!駆け足になりましたがなんとか、完結されることができたのも、何年も更新停止していても、コメントしてくださる方がいたからです!こちらこそ本当にありがとうございます! (2021年3月14日 21時) (レス) id: d8ea628aa6 (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!連載当初からずっとこの作品を応援しておりました。更新されたときの嬉しさは勿論ありましたが、完結に少し寂しさを感じました。完結させるまで沢山の苦労があったことと思います。本当にお疲れ様です。そしてありがとうございました! (2021年3月14日 7時) (レス) id: ecea65ed61 (このIDを非表示/違反報告)
のんふぇる(プロフ) - 更新待ってました! (2021年3月8日 4時) (レス) id: 993a2e5786 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りこ | 作成日時:2014年6月22日 19時

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