あんずと隠れファン (4) ページ8
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「それにしても、A先輩は本当にアイドルに興味無いんですね。意外です」
「そう?好きそうに見える?」
「あ、いえ、そうではなくて」
誰もいないアイドル科の校舎を、あんずとAの2人で歩く。
この時間はどのユニットもレッスンをしているらしく、いつもあまり人がいないのだとか。それは、Aにとっても好都合だった。
誰とも会わずに、Trickstarのみを見て帰る。
それが彼女の目標だった。
いくら女神のイメージを持たれていようと、普通科女子にも大人気のアイドルと接触したとなれば、思わぬボロを出しかねない。
なるべく平穏に……
「あれ、あんずちゃんじゃん。ラッキー♪」
「っ、……羽風、先輩」
……と思えば思うほど、平穏にいかないものだ。
身構えたあんずを横目に、Aは「この人誰?」とでも言いたそうな表情を作った。無論、わざとだ。
「あれ、めっちゃ美人がいる。どちら様?もしかして普通科の人?」
「……ええと、アイドルの方ですか?」
当然、薫のことは知っているA。しかし、それを一切悟らせない完璧な演技で、初対面……というより初見の態度を作る。
薫は、自分のことを知らないAに驚いているようだった。
「あれ、俺のこと知らないの?珍しいね」
「ごめんなさい……アイドルにはあまり興味がなくて。普通科3年、観月Aです」
自己紹介をすると、一歩下がって成り行きを見守っていたあんずが、Aの制服をぎゅっとにぎったのがわかった。
心配いらないよ、と心の中で呟いてしっかりと薫の目を見るA。
「同い年だから敬語はいいよ!
俺は羽風薫。UNEDEADっていうアイドルグループに所属してるんだけど、知らないかな?」
にこやかに喋りかける薫に、悪い印象はあまりない。ただ、女たらし感は出てるので、あんずが怯えるとしたらそこか……とAは1人納得する。
そして同時に、逃してもらう策を考え始める。
「ねえねえ、普通科の人ってことはこと後予定ないよね?俺と一緒に遊ばない?」
「えっ」
声を漏らしたのは、Aではなくあんずだ。
この後に予定がないと決め付けられたからだろうか。少し怒っているようにも感じる表情をしている。
ついつい苦笑いをしてしまうA。
そして、ついさっきピンとひらめいた策を、口にする。
「________」
「「えっ!?」」
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時