集う死者 (1) ページ35
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朔間くんの後にくっついていって、たどり着いた場所は全くの予想外の場所だった。少し古びた扉に書かれた文字……そこには確かに『軽音部室』と書かれている。
意味がわからなかった。朔間くんは軽音部に所属しているから、彼がここに来る理由はわかる。しかし私は先生に呼ばれてアイドル科にやって来たのに。こんな場所に用は無いはずなのに。
「あまりもてなせないがのう。まあ入っておくれ」
「…………し、失礼します」
昨日の一件があるので無駄に逆らうのは得策では無い。そう判断した私は、特に何も聞き返す事なく彼の言う通りに中へ入った。
私のその態度に若干驚いた様子の彼だったが、すぐに満足そうににっこり笑うのだから、ファンとして心臓を握りつぶされそうになってしまう。
それでも警戒心は大切だ。私は、彼に訝しげな視線を向ける。
「あの、何の用があって呼んだんですか?」
「用がなくては呼んではいかんのか?」
「………………はい?」
何言ってるんだ、この人。
駄目に決まってると思うのだが。そもそも、普通科の生徒って立ち入り禁止なのに。え、じゃあどうやって受付の人ごまかしたの……?
私の頭にはてなマークが浮かんでいるのに気づいていながら、彼は説明をしてくれない。
「ファンとの交流は大切だと思うのじゃが」
「はぁ?」
「あと、おぬしは我輩の言うこと聞くルールじゃし」
その言葉に、思わず顔を歪めてしまう。
分かった。それは分かったから、本当に何の用なんだ。レッスンサボってまで私を呼ぶ必要があったのか。沈黙が辺りを襲う中、私はひたすらにそんなことを考えていた。
すると突如、彼が口を開く。
「おぬし、よく薫くんと遊びに行く約束を取り付けることができたのう」
「え……誘ったんじゃなくて誘われたんですけど」
「そうではない」
意味のわからないことを言い出した彼は、急に私の腕を引っ張った。
当然、彼の方に倒れこむ私の体。
_______本当は異性が苦手なくせに。
すぐ近くで呟かれ、咄嗟のことに顔が真っ赤になっているのが、自分でも分かった。
彼の瞳が私の視線をとらえ、離さない。目を逸らそうとしても、そらせない。
そんな中。
「あぁぁ〜っ!?何してんの、朔間さん!?」
聞き覚えのある声だけが、私の頭の中に響き渡った。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時