華の牙【朔間零】

偽りのシャノアール (2) ページ31

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本来、私の演技は他人を騙すことで完成する。

友人をも騙す……騙し通してしまう私は、本当に性格が悪いのだと改めて実感した。


今日は、ユウに一芝居打ってもらわなければ。



「え！？プロデュース科に転科するの！？」

「ちょ、ユウ……！」



翌朝、いつも通り普通科に登校した私は、ユウに転科のことだけを話した。

案の定、というか予想以上に拡声され、クラス中の人という人が一斉にこちらに視線を向ける。



「え、観月さんプロデュース科に行くの！？」

「うそ、まじ！？」



数人の、私を女神だと信じて疑わない女子がすぐに近づいてくる。ユウは「しまった」という顔をしていたが、お咎めは無しだ。

……全くの狙い通りだからね。



「いや、あの……話は来てるんだけど、断ろうと思ってるの。だって私……」



＿＿＿＿＿みんなと高校生活、楽しみたいから。



困ったように、少し悲しそうに、私は微笑んだ。

途端に、その女子達はまた悲鳴をあげる。「観月さんめっちゃ良い子！」とか、「まじで女神！」とか、本当に予想通りすぎて笑ってしまいそうだ。



「大丈夫だよ、折角だし受けちゃいなって！！」

「そうそう、うちらも寂しいけど、観月さんなら夢ノ咲のアイドルの役に立ってくれそう！！」

「他の女子ならムカつくけど、観月さんなら全然許せる！！頑張って欲しい！！」



口々にもたらされた、肩を押してくれる言葉。

徐々に上がっていく口角は、作戦が上手く行き過ぎている喜びから、良い友達を持ったことへの喜びに見えるよう切り替えた。



「でも……私は……」



＿＿＿＿＿＿最後の仕上げだ。

私は、隣で訝しげな表情を浮かべるユウにチラリと視線を送った。

それだけで、親友は全て汲み取ってくれる。



「A……」

「………ユウ？」



真剣な顔をしたユウは立ち上がると、私の手を取った。そして、へらっと笑い言葉を続ける。



「ずっと一緒にいたAと離れるのは寂しいけど。それでも私は、Aが輝ける道に進んでほしいと願ってる」

「………ゆ、ゆう……ｯ！！」



ポロポロとこぼれる涙。私は立ち上がり、ユウに勢いよく抱きつく。またもや上がる、女子からの悲鳴。



「私……プロデュース科、がんばるよ……！」



涙を拭いながら、一生懸命言葉を紡いだ。

………そして、ユウの耳元で呟く。





「本当、助かったわ」

「私を茶番に巻き込まないでよ」





これで、私の懸念は消えうせた。




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