処刑の時間、契約の瞬間 (6) ページ28
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たった今告げられた、予想とは違いすぎる零の望みに、Aは驚きを通り越して混乱している。
トップアイドルが、「俺に従え」?
彼女の混乱は妥当なものだった。なぜなら、Aを“観月の人間”として見たとき、それ以上に得をする要求は山のようにあるからだ。
「簡単だろ?俺の言ったことに全部『はい!』って元気よく返事すりゃあいんだよ」
「ちょ、ちょっと待って!!」
話を完結させようとする零に、Aは大慌てで声を挟んだ。
「そ、それで、あなたは何を得するの……?」
恐る恐る、彼女は問いかける。彼女が恐れているのは、家が丸ごと彼の手中に落ちないかということだ。
この要求を飲んでしまえば場合によってはMIZUKIグループは存続出来なくなってしまう!!…………と、彼女は現実的に考えて有り得ないことを心配していたのだった。
「んなのてめぇが知る義理はねぇな。とにかく頷いときゃいんだよ♪」
「………ッ」
にっこりと笑った零。
仮にも目の前にいるのは、憧れ続けた大好きな人だ。Aは、少しの間うつむき、顔の熱が引くのを待った。
「…………分かった」
「お?」
「ただし、出来れば……家には迷惑をかけたくない」
顔を上げ、強い意志を持って告げる。
こうなってしまったのは、結局のところ自分の落ち度。自分で蒔いた災いの種は、自分で拾わなければならない。
「今日から私は、朔間さんに……し、したがい……」
一旦冷静になると、自分の言っていることと、ついでに手首に巻かれたネクタイが恥ずかしすぎて。
真っ赤になって目を逸らして口にした、零の要求。
「したがい……ます……」
「………………」
(本当に、これで良かったの……!?)
零は、その様子を無表情で見つめていた。
_______しかし、次の瞬間。
彼は、とんでもないことを口にする。
「んじゃ早速ひとつ。
_____お前、プロデュース科に来い……♪」
「………………はい?」
これが、トップアイドル朔間零と、偽りの女神である観月Aの契約の瞬間。
これより、Aの壮絶な人生が幕を切るのであった……………。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時