吸血鬼が目覚める夜 (3) ページ22
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ほぼ無意識に。自己防衛の本能が働き。
口から発せられた言葉は、もう取り消すことなど出来やしない。
「あ……」
「へぇ?普通科の全女子を騙すその“女神のような優しく美しい性格”は作り物だったのか」
自分で理解してしまったが、目の前の人物に言われればまた違う意味での焦りを覚える。
大好きな人に、バレてしまった……!!
だがそれ以上に、とにかく早くどいて欲しかった。世界中のどこに、彼に押し倒されて平静を保てる女子がいるのだろうか。
「あ、あの……本当にどいてください、逃げませから……」
「………わかった」
半分くらい目を回してそう言うと、目の前の彼は取り敢えず動いてくれた。
……と、思ったら。
「!? な、なななにしてるんですか!?」
何故か彼は………ネクタイを緩め始めたのだ。
私はもう完全にパニック。計算して作り上げた完璧な性格など、微塵も存在していない。
ぎゅっと目を瞑り、手を前に押し出した。
「ほぉら、これで逃げられないじゃろ……♪」
「………………え?」
と思ったら。少しの違和感があり、ゆっくりと目を開ければ……私の手は、彼のネクタイによって綺麗に縛られていた。
目を丸くする私。
それに対し彼は、にっこりと綺麗に微笑んでリボン結びされた手首を見つめていた。
「逃げたきゃ逃げてもよいぞ。ただ………その場合、我輩は明日にでもネクタイを返してもらいに普通科まで行かねぱのう。普通科の、おぬしのクラスにでも♪」
「!?」
なんて合理的な手段で逃げ道を塞がれたのだろう。一周まわって冷静さを取り戻した私は、深刻な顔をしてそんなことを考える。
この拘束、素早くやったにしてはかなりきつく縛ってある。自分ひとりじゃ取れそうにないから逃げようにも逃げられない。
人目など諸々を振り切って逃げたとしても、ネクタイを持って帰ったら彼が取りに来ると言う。
…………普通科に、だ。
「じょ、冗談じゃないです!みんなの前でアイドルに、朔間零にネクタイを返せるわけないじゃないですか!」
「ならば逃げなければよい」
ギラリと光った瞳。
何故、彼が私を逃がそうとしないのか……いや、分かっているのだが、とにかくもう逃げ場はない。
捕食者のごとく私を見下ろす目に、ゆっくりと自分の目を合わせた。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時