吸血鬼が目覚める夜 (1) ページ19
Aside
夢を見ていた気がする。そう＿＿＿＿＿＿大好きな人に、絶望した夢。
「んっ……うぅん……」
目が覚めると、そこは見慣れた……とまでは行かないが、見た事のある景色だった。
ここは多分、このショッピングモールの医務室だ。
なんで自分はここに……と、眠る前の記憶を辿る。そして、思い出した。否、思い出してしまって。
「私……ぶっ倒れたんだ……」
………朔間零に会って。
「お目覚めかえ？嬢ちゃん」
「ふひゃぁぁあ！！？」
たった今考えてきた声がすぐ近くから聞こてきて、さながら猫のように飛び退いてしまった。びっくりしたのか、目を丸くしている彼。＿＿＿＿間違い無く、夢ノ咲学院アイドル科の朔間零だ。
(ど、どどどどうしてスーパーアイドルがここに！？)
一瞬にして、心の中の荒ぶりは最高潮になる。
しかしそれは心の中だけでの話。最初にそれを問うのはあまり宜しくない。そもそも私は『アイドル知らない人』なのだ。
「あの、Trickstarのライブはちゃんと始まったのでしょうか……？」
心配で心配で、といったように聞く。
倒れてどれくらいだったのかは分からないが、少し休んだことで心の疲れも多少は取れた。私の営業スマイルも、まだまだ使い物になる。
大好きなアイドルが目の前にいても、焦るのは心の中だげでいい。
「心配せんでもよいぞ。Trickstarのライブは大成功。【DDD】の集客も期待出来るとあんずの嬢ちゃんが言っておったからのう」
「そ、そうでしたか……」
ほっとしたような表情を作る。MIZUKIグループの建物でライブを失敗させるなんてことは許されないから、取り敢えず安心した。
………さて、ここからが勝負だ。
私は、“夢ノ咲学院普通科の生徒。ただ、アイドルに興味はなく、アイドル科の生徒のほとんどは名前も顔もわからない”。
「あの、ここは医務室ですよね……誰が運んでくれたのでしょうか」
「薫くんじゃよ。本人はずっと着いていたいと言っておったが、どうやら早く帰ってこいと言われてしまったらしくてのう」
「そうでしたか。………それで、あの……」
＿＿＿貴方は？
誰が見ても、完璧な演技だったと思う。
確かに私は朔間零の大ファンで、ライブも何回も行ってるし、手紙だって毎日送り付けてるけど。しかし、そこには観月Aの姿は一切無い。
早まる鼓動の音を無視し、私は失礼の無いよう薄く微笑む。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です！更新頑張ってください！ (2018年8月18日 16時) (
レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています！吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは？間違っていたらすいません！ (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます！初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います！ (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リッコ | 作成日時：2018年8月7日 17時
