剥がれる“余裕” (1) ページ15
.
翌朝。
「あ、観月さん!おはよう!」
「おはよう観月さん!」
「おはよう!」
教室に入った途端にかけられる、大勢からの挨拶の声。男子はどうも話しかけずらいのか、実際に声をかけるのは女子が大半だ。
Aは嫌な顔ひとつせず(心の中でどう思っているのかは別として)ひとつひとつに丁寧に言葉を返していく。
_____そんな中、一際耳に残る声がひとつ。
「おはよう観月さん!今日も美人だね!」
「………………ユウ?」
満開の笑顔で声をかけたユウ。しかしよく見れば、その額には冷や汗が流れていた。
それもそのはず。
昨日先に帰ってしまったことを申し訳なく思い「ごめんね〜」とメールを送ったところ、返ってきたのは「明日覚えてなさいよ」という物騒な文章だったのだ。
そして実際、Aがユウの名を呼ぶ声には、確かな怒気が含まれていることに、ユウだけが気づいた。
「ごめんって!ほんとに!」
「……わかった。私も怒りすぎたかも。ごめんね!」
にっこりと微笑み、慈愛に満ちた口調でそう言うA。ユウの耳元に顔を近づけて、呟く。
「ここじゃあ何かしたら目立つもんね?」
ユウが震え上がってのは、言うまでもない。
気を取り直して席に座ったふたり。話題はもちろん、アイドル科に入ってTrickstarのパフォーマンスを見たことについてだ。
ユウには、単純に疑問があった。
「なんで嬉しそうじゃないの?アイドル科入れたのに。朔間零に会えなかったから?」
彼女には疑問だった。
性格の悪いAならユウの存在を邪魔がって、逆に先に帰ったほうが喜ばれると思っていたのに。学校に来てみれば、Aは帰ったことを怒っている様子。
しかも、アイドル科に入れたこと自体あまり嬉しそうではないような……顔も、心做しか疲れているように感じる。
「ユウ、土曜日は予定空けといてね」
「え?」
「ドリフェスを見に行くから。一緒に行こうよ」
目を丸くするユウ。返ってきたのは質問の答えではなく、予想外のお誘いだった。
「それはいいけど、どうしたの。本当に」
もはや不審を通り越して心配そうな表情をするユウに、ムッとするA。当然、表情には出さないが。
「私別に、アイドルに関わりたいわけじゃないよ」
だからため息をついて珍しく憂鬱そうにするAを見て、ユウは目を丸くする。
.
168人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時