仕事_137 ページ41
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『………』
ひのと「………」
巫女装束に着替えたAは、ひのとの部屋におもむいた。
見張りをしていた役人を下がらせて、部屋には二人だけだ。
正面に座るひのとは、じっとAを見つめると、頭を下げた。
ひのと「…すみませんでした」
『…』
しばらく、ひのとは頭を下げたままだった。
Aは静かな眼差しを向ける。
『お前のしたことは許されないことだ。この先ずっと、それを背負って生きなければならない』
Aはそっと、ひのとの肩に手を添えた。
『だが、お前が真実反省しているのはわかっている。顔を上げてくれ』
体を起こしたひのとは弱く笑う。
ひのと「…信じられないかもしれないけど、俺、母さんに会ったんだ。会って、話をした」
忘れない。あのとき母に受けた痛烈な怒りと、悲しいほどに深い優しさを。
ひのと「生涯背負って生きるよ。この目の色だって、俺が犯した罪の色なんだし」
『？』
ひのと「ほら、血の色してるでしょ？俺の目」
『血の色……あぁ、言われてみれば確かに、そうにも見えるな』
Aは今初めて気づいたようだった。
ひのとは目をしばたかせ、彼女に問うた。
ひのと「逆に、あなたにはどんな色に見えたの？」
『夕焼け』
ひのと「え？」
『夕焼けの色だ。あの空を、切り取ったみたい』
ひのとは目を見開く。耳の奥に、懐かしい声がよみがえった。
＿＿「それにね、お母さん、ひのとの目 好きよ。だって、優しい夕焼けの色をしているもの」＿＿
『知っているか？夕暮れにあの空が赤く紅く染まるのは、太陽が優しくて、人のことが好きだからなのだ』
ある日の月夜の晩、三日月が教えてくれた。
『だから、その優しい色を宿したお前の心も、きっと優しい』
ひのとは咄嗟にうつむいた。
どうしてか、目頭がたまらなく熱い。
ひのと「…優しいのは、あなたのほうだ。ほんと、天使みた…い……」
ひのとはAを凝視した。
瞳の色も、髪の色も違う。だが、夢で会った少女と同じ 慈愛に満ちた面差しが、そこにあった。
Aは何も言わずに、淡く微笑む。
ひのとも、何も聞かなかった。代わりにこう言い募る。
ひのと「…もし、顔向けできるようになったら、その……また､会ってくれますか？」
Aは不思議そうに首を傾げたが、笑って頷いた。
『もちろんだ』
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
