仕事_138 ページ42
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Aに
そのまま借りていた部屋で、政府への連絡やひのとの引き取りの最終確認を行なう｡
漣「…最近知ったんだが」
作業の終わりかけ、漣がぽつりぽつりと話し始めた。
漣「マイフレンドは…あいつは誰にでも等しく心を傾けることができるんだ。それは元々感情が薄いからなのか天性なのか、俺にはわからない」
Aはたくさんの真実を抱えて、それらすべてを包容できる。
漣「だからだろうな」
男1「え？」
漣「だからあいつが、この本丸を任されたんだよ。俺だったら、どちらかにしか手を差し伸べない。
両方救うなんて、俺には無理だ」
ひのとに対する彼らの怒りも、憎しみも､
彼らの思いは当然のもので、それを否定することも拒絶することもAにはできない。
だが、それと同じようにして、Aはひのとの心も知っている。
どれほど傷ついたのか。どれほど絶望したのか。どれほと、己れを責め苛んだか。
男1「…私にも、できそうにないです」
漣「だろ？」
役人は最後に送信ボタンを押し、画面を閉じた。
男1「さすがは天使と言うべきでしょうか」
漣「おいおい、俺だってそうだぞ。それにあまり言いふらすなよ？こんのすけだって知らないんだから」
男1「ご安心を。私と、私の後輩しか知りません。それに漣さんの上司にも脅されてますし」
漣「ボスねえ…マイフレンドにはあまちゃんなんだよ」
男1「痛いほどわかってます」
お互い苦笑していると、妻戸が開いた。
男1「…もうお話は良いのですか」
ひのと「はい」
ひのとは憑き物がとれたような、落ちついた顔をしていた。
漣「んじゃ、そろそろ行くか…」
＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿
本丸を去る前に、ひのとは広間でここの者たちに謝罪の言葉を述べた。
彼らは何も言わずに耳を傾けていた。
ひのとは彼らの返答を聞かずして、署へと去った。
ひのとも役人も漣もいなくなったあと、Aが真実を話した。
ひのとは前任に操られていたこと。そのせいで心が狂ったこと。その間の記憶がなかったこと。
『許せなくて良い。ただ、覚えていてくれ。
彼も、“人”なのだ』
すすり泣く声が聞こえる中で、彼女の頬にも、雫が伝い落ちた。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
