死神様のお仕事 6【刀剣乱舞】 (ページ35)

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瞼が重い。何度も固唾(かたず)を呑み込んで、そろそろ呼吸が乱れてきた｡

それでもAは、笑う。

『…救いたいのだ。お前も、皆も』

だって私は、そのために来たのだから。

一期は顔を上げて、本丸のある場所を眺めやった。そのままの姿勢で勇気を振り絞って口を開く。

付喪神である自分は、何に対して祈ればよいのだろう。天か、世界のすべてか。

それとも。

一期「…私たちは、人に振るわれる以外で…自らの手で付喪神を傷つけてはいけない。殺しては、いけない」

それは、気の遠くなるほど昔、刀剣の付喪神誕生の折にさだめられた、不可侵の理(ことわり)。

一「……あなたが来る、何年も前です」

うんと、Aは僅(わず)かに顎を引く。雪の冷たさが、まとった布越しに体温を奪っていく。

一期は続ける。その声が、かすかに震えを帯びているような気がして、Aはしかしそれに気づかないふりをした。

一「……私は、五虎退を。大切な弟を」

胸の奥がきりきりと締めつけられる。今でも時折、あのときの幻覚が自分を追い詰め、苦しめて。

あの日、自分はあの子を。

一「……この手で、折りました」

Aは、重い瞼を開いた。ちらりと視線を向けると、一期は天を見上げていて、その表情はわからない。

一「初代の命(めい)に抗(あらが)えなかった……もしあのまま言霊を使われ続けていたら、私は五虎退だけでなく、他の弟たちをも折っていたでしょう」

Aは瞬きをした。

ここに来た当初、一期は五虎退がAと関わるのを険しい目で見ていた。五虎退に近づこうとする彼女を忌み嫌っていた。

それは、失う痛みを知っていたからだ。人と関わるが故(ゆえ)に、失う痛みを。

Aは、そうかと小さく呟いた。

呟いて、鉛のように重い腕を持ち上げて、一期の頭を撫でた。いつも自分がそうされていたように。

一期は突然のことに驚いて固まっている。

『一期は、それでずっと痛い思いをしていたのだな』

確かめるような問いかけに、一期はぴくりと肩を震わせる。Aは一期の頭を何度も何度も撫でた。

『じゃあさ、……もう、いいよ。終わり』

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