仕事_130 ページ34
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名前を呼んでくれる者は、たくさんいる。
皆、大切な、大切な友人だ。
＿＿＿＿＿＿A殿
その声に呼ばれて振り返れば、黄金色の瞳がそこにある。
けれども、その瞳が、ほんの少しだけ悲しい。
そう思っているなんて、内緒だ。
だから、そんなことは絶対に気づかせないように、自分は
＿＿＿＿＿＿なんだ、一期
そうすると悲しい色がやわらいで、切ないほどに穏やかな眼差しが返ってくるから。
だから、呼ばれたら必ず応えるって、決めていた。
ずっと、決めていたのだ＿＿＿＿
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それまで投げ出されていたAの指が、ふいにぴくりと動いた。
それに気付いた一期が目を
Aの口腔から、黒い粘液が吐き出された。何度か苦しそうに咳き込んで、Aはのろのろと目を開いた。
その瞳に彼を映し、目を細める。
『……なん､だ…一期…』
呼ばれた。何度も何度も、悲痛なほど激しい声で、胸を突かれるような悲しい声で。
対する一期はしばらく呆然とAを見下ろしたあとで、肺が空になるまで息を吐き出した。
小刻みに震えている右手で目許を覆って、一期はうめいた。
一期「……あまり…心配をかけんでください…」
Aは、全身にどっと噴き出した冷たい汗を自覚しながら、それでも努めて平静をよそおいながら話す。
『……お前もだぞ、一期』
一期の肩が震えた。
言わないと。いま、言わないと。
そのまま目を閉じて、Aは這い登ってくる
『私の知らないところで、お前に何があったのかなんて、一期が言ってくれないと、わからないのだ』
一期は手のひらで口元を覆って、金の瞳でAを凝視した。
Aは、目を閉じたまま、笑う。
『隠し事なんてごめんだぞ。私だって、心配ぐらいするさ』
Aは、瞼を開いて一期をちらりと見た。
『そういえばさっき、珍しく私のこと、呼び捨てにしていたな』
一「！……ひ、非常時です。お忘れください」
『これからそう呼んでくれて、良いのだが』
抑えていても、息が上がる。悪寒が絶え間なく襲ってきて、吐き気もせりあがってくる。
あの化け物の身の内の瘴気は、彼女の霊力と精気をぎりぎりまで削り取ったのだ。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
