仕事_125 ページ29
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主命だと言われると、従ってしまうのが彼である。
長谷部「……主命とあらば」
『…すまない…なるべく早く、ここから出てくれ』
彼女はなぜこんなにも急いでいるのだろう。
二振りの疑問は、一瞬のちになくなった。
「「っ？！」」
衝撃が、二振りの胸を貫いた。
同時に、冷たく凍えるような感情が突き上げてくる。
一期は立ち上がって、胸元に手を当てた。心臓が不穏に跳ねる。
長谷部「なんだ…？」
風が生じた。根雪の上に積もった雪が舞い上がって、白煙が視界をさえぎる。
その向こうに、
『来たか…』
長谷部「…あれ､は……？」
『
白煙をあげながら、四肢のない
『長谷部！行け！』
長谷部「っ！」
長谷部は弾かれたように駆け出した。
これは主命だ。違えるわけにはいかない。
残された一期とAは、化け物を見据えた。
『すまんな、一期。少し付き合ってもらうぞ』
一期「…A殿も逃げるべきです」
『あれは私を追っている。逃げても無駄さ……だから、ここで片をつける』
そして必ず。
『《＿＿＿＿
必ず、ひのとも、お前も助ける。
『《＿＿＿＿滅＿＿＿＿！》』
放った言霊が、
それは化け物に直撃し、瘴気と妖気が噴出した。生ぬるい風が吹き荒れて、雪を舞い上げ視界を
Aは目の前に手をかざした。雪が目に入って、瞼を思わず閉じる。
一期「A殿！」
切迫した叫びが、Aの
数瞬遅れて、冷たい雪に混じった鋭い瘴気が肌に突き刺さる。
白い噴煙が割れたその向こうに、化け物の姿があった。
瞬く間に眼前に迫って、化け物はぐわりとあぎとを開く。
飛び退こうとして足に力を込めた瞬間、足場が埋もれた。雪に沈んで、対処が遅れる。
『っ！』
息を呑むAの前に、長身の影が滑り込んだ。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
