仕事_124 ページ28
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長谷部が結界の一部を力任せに蹴り壊した。
Aはそこに飛び込むようにして結界内へ入る。彼女の後を追って長谷部も入った。
その直後、硬い音をたてて結界が閉じる。
一瞬の出来事だった。
五虎退「……A様…いち兄…」
三日月「なぁに、Aのことだ、すぐに連れ帰ってくる。長谷部もついておるしな」
三日月「………」
だが実際、その言葉を信じたかったのは、三日月自身だったのかもしれない。
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結界に飛び込んだ瞬間、長谷部は
ふいに、耳の奥がきんと鳴った。
ひどい耳鳴りが脳裏を貫いて、ぐっとうめいて耳を押さえる。
周囲に変化が起きていた。
先ほどまでは確かに聞こえていた全ての音が掻き消えて、奇妙なほどに強い圧力が長谷部にかかった。
長谷部「(これが結界内…これでも衣のおかげでましなのか…)
まずはあいつらを探しましょう。A様……？」
そこにはすでに彼女の姿はなかった。
代わりに、雪上に点々と足跡が残っている。
長谷部「(この中を行ったのか…？！速く追わねば…)」
雪に足をとられながら、長谷部は必死になって進んだ。
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『……来た』
一期が緩慢に顔を上げる。
遠くに、こちらへ走ってくる影が見えた。
長谷部「A様…！」
『長谷部、至急ひのとを担いで結界を出れるか』
予想外の言葉に、長谷部も一期も戸惑いの声をあげる。
長谷部は足元に転がるひのとを見、もう一度Aに視線を戻した。
長谷部「…なぜです」
『本当は一期も連れていってほしいのだが……それまで待ってはくれないようだ』
二振りはその言葉の意味をつかみあぐねて眉をひそめる。
Aは自分が着ていた霊力の衣をさっとひのとに被せ、
『長谷部、頼めるか』
長谷部「………」
長谷部は答えない。
それは初代を救う行為に思えるからだ。
長谷部の心中を察したAは一つ息をはくと、彼を見上げてはっきりと述べた。
『主命だ。今すぐひのとを連れて結界を出ろ』
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
