仕事_112 ページ16
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山姥切「……A…」
山姥切の傍に膝をついたAは、痛ましげに顔を歪めた。
『…少し、耐えてくれ』
震える手で、山姥切の足に刺さった筆架叉を引き抜く。
衝撃が痛みに変わる前に、ひときわ強く柏手を打った。
傷口は塞がったが、やはり蠱毒を取り除くことはできないらしい。山姥切は起き上がれずに目線だけでAを見上げる。
『ごめん､なさい……山姥切…ごめん』
先程
繰り返し繰り返し
感覚の戻らない右手を懸命に動かして、安心させるように握りかえした。
山「なんてことない……あんたが無事で、よかった…」
Aはもう一度、ごめんと謝る。
そして、
『守ってくれて、ありがとう』
そう言って、花のようにふわりと微笑んだ。
山「っ…」
それを見た山姥切は、違う意味で心臓が跳ね上がった。あわてて顔ごと視線を
ばくばくとうるさい心臓をなだめていると、突然強烈な睡魔が襲ってきた。瞼が重い。
三日月がいるからAはもう大丈夫だ。
そう判断した山姥切は
最後にもう一度だけ、Aの手を握りかえして。
『山姥切……？』
寝息をたてている山姥切を見て、Aはほっと息をついた。
きっと毒の浄化には体力がいるのだ。今は寝かせておこう。
そこでふと、ひのとと
そういえば、さっき二人は何を話していたのだろうか。
ひのと「…………」
ただただ茫然と三日月を見つめていたひのとは、深く息を吐いた。
深く、深く、その顔から潮が引くように表情が消えていく。
そして
ひのと「………お前がいけないんだ」
ぞわりと背筋を悪寒が走る。どろりとした気配と重苦しく冷たい
何か来る。
はっと息を呑んだ三日月は、瞬時にAと山姥切を抱えて高く跳躍した。
Aは咄嗟に三日月にしがみつく。その視線の先で、土中から飛び出した化け物が、大きくあぎとを開いて自分たちを飲み込もうとしていた。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
