第7話 ページ7
お風呂から上がって髪を乾かしてから、肌のお手入れセットを持ってリビングへ戻ると。
う「先に寝てて良いって言ったのに。」
『まだあまり眠くなくて…。』
う「そう?それなら良いけど。今日は疲れただろうし眠くなったら部屋行きなね?」
『うん。』
リビングで何やら難しそうな問題集を開いてノートに数式を書いていくA。
Aの部屋にはまだ何もなくて、明日必要なものをAと一緒に買いに行く予定だったから机も勿論ない。それでリビングでやっていたのだろう。
ちなみに布団は今日のところは客用のもので代用させてもらった。
う「難しそうな問題解いてるね。転校先から課題でも出たの?」
『ううん、これは私の趣味みたいなもので…。』
う「趣味勉強なの!?凄いな……あんまり無理すんなよ?」
『……………ありがと。』
………あ、ちょっと暗い表情。無理に笑った。
う「…Aは勉強好き?」
『そうだなぁ…勉強してる時は他の事忘れられるから、好きかな。』
う「そっか…俺は苦手だったなぁ。」
『ふふ、おばさんから聞いた事ある。小さい頃は外で遊ぶのが好きだったって。』
う「野球とかドッジボールとか体動かす方が好きだったんだよね〜。」
楽しかった。
何と言われようと、俺はただ純粋に…
……………あ。
う「……そっか、俺が外遊びが楽しくて好きだったのと同じだ。」
『?』
不思議そうに首を傾げたAに向き合って今思ったことを伝える。
う「Aが勉強するの、他の奴が外遊びやゲームやるのと同じ感覚なんだ。楽しいからやってる。…誰かの意見なんて求めてないんだよな。」
褒められたいとか、そういう気持ちで遊んでなかった。ただ純粋に楽しくて…誰にも邪魔されたくなくて…。
う「…ごめん、"無理すんなよ"なんて…おかしな事言っちゃったね。Aは無理なんかしてないもんな。」
『っ…!』
う「好きな事たくさんやりな。俺も今の仕事や歌い手の活動、すげー好きだから。」
『っ……うん…!』
そう伝えると、Aの目からほろり、涙が溢れた。
う「ぇぇええええ!?!?うそ、泣かせた!?え、ごめん!!めっちゃ傷つけちゃった!?」
『ちがっ、ちがうの…!!』
首をゆるゆる横に振るAが俺の目を見つめて、ふにゃり、と笑った。
『わたるくんが、私のこと、分かってくれたのうれしくて…っ!』
う「…そっか。」
その笑顔に安心して、俺もふにゃりと笑ってしまった。
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まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作成日時:2019年8月6日 12時