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第4話 ページ4

う「ほい、ここでーす。」

『わ、渉くん凄い所住んでるんだね…!』

う「まぁ職業柄セキュリティと防音にはこだわってますからねぇ。」

マンションをキョロキョロ見渡しながら俺の後ろをついてくるAちゃん。
……いや、可愛いんだけど全然進まない。

う「…まぁ良いか。」

好きにさせてあげよう。
彼女を縛るものなんて、ここには何もいらない。



『渉くんは何階に住んでるの?』

う「んー……ここ。」

エレベーターに乗り込んで降りる階のボタンを押す。



あっという間についたフロア。

部屋の扉を開くと、むわっとした熱気。

う「ひ〜〜冷房つけよ…。」

急いで部屋に上がって冷房をつける。
早く部屋を冷やしてくれ。

……あれ、Aちゃんは?

リビングを出て玄関を覗くと、ワタワタと焦るAちゃん。

う「何してんの、上がって。」

『あっ、お邪魔します…!』

う「あ、違った。」

『へ?』



う「……おかえり、A。」



今日から同居人。
まずは名前の呼び方から、歩み寄ろうか。



『たっ、ただいま…っ!』





う「セキュリティ厳しいから鍵無くすなよ〜。」

『うん。』

う「という事で、はい。」

シンプルなキーケース。ここの部屋の鍵、兼、エントランスに入る為の鍵を付けてある。

『え、キーケースも?』

う「あー、それは仮の奴。とりあえず何かに付けとかなきゃ荷物整理してる段階で無くしそうだろ。」

少し落ち着いたらAのものを見に行かなくちゃいけないよな。

『荷物は?』

う「あ、既に部屋に運ばれて来てた。大きなダンボール2箱だけだったけど、本当にあれだけで良かったの?」

『うん。参考書と洋服が数着、必需品だけだから。』

少しだけ、つまらなさそうに言った。

う「…そっか。必要なものはほとんどここにあるもんな。」

『…うん、ここにあるから。』



嬉しそうに笑ったAに手を伸ばす。



『っ』

う「…頭、撫でても良い?」

『ぁ……っ、』

う「…」

明らかに変わった顔色。やっぱりまだ無理か。

う「…焦りは禁物だよな。ごめん、怖がらせて。」

『っ、んーん…私の方こそ…ごめんなさい…』

う「……ゆっくり、ゆっくりで良いよ。」





俺が思っているよりも、Aの心の傷は深いものだ。

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まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月6日 12時

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