検索窓
今日:12 hit、昨日:5 hit、合計:101,649 hit

【理鶯】 ページ45

「…?」



狩りを終え、料理を待っているであろう
彼女の元に向かおうとしていたとき。


ふと、身に覚えのない血痕を発見した。




野生動物同士が喧嘩でもしたのかと思い、
あまり深く考えずにその場を後にしたのだが。



 「…む」



先程よりも、少し大きめの血痕を発見した。
よく見れば、この先の方にまで続いているようだった。



この先には、Aが待っているはず。

そして、狩りに出る時には、
この血痕はなかったはずだ。




この血の正体が何であったとしても。
彼女に危害が及ぶ可能性が、十分にある。



 「A…?」



焦りを覚え、慌てて彼女の元に向かうも、

辺りを見渡しても、その姿がなくて。



 「A!A、どこに居る!答えてくれ!!」



頼む、どうか無事でいてくれ。



貴女に何かあったら、

小官は、



 『…』


 「ッ!!

  A、A!!大丈夫か、おい!!」



草木の中に隠されるように
倒れていたAの姿を見つけ、その体を抱き起こす。


その体は、各所に血が付いていて。




 「どうした、何があった!?

  しっかりしてくれ…ッ」



…息は、ある。

落ち着いているように、聞こえなくもないが。



 「大丈夫だ、大丈夫…

  聞こえるか…?A、必ず助ける…。

  だから、大丈夫だ…」



彼女に声をかけるというよりも。
自分自身に言い聞かせるようにして。


そっと、血を拭き取ってみる。



 「……?」



そこで、あることに気が付いた。

…焦ってしまった過去の自身を、
恥ずべき存在だと思うほどには、重大なことに。



 「…A、起きているのだろう?」



小官の口から出た驚くほど低い声は、
恐らく呆れからきたものだろう。

だが、彼女を怯えさせるには十分すぎた。



 「あまりナメてくれるな…。
  小官は軍人だぞ、多少の心得はある。」



はあ、というわざとらしい溜息は、
呆れからなのか、安堵からなのか。


小官の言葉の意味を理解したのか、
Aがそっと目を開けた。



 「随分凝っているな。
  見ただけでは分からなかった。」



そう言うと、彼女は少し嬉しそうに微笑む。



 『心配した?』


 「…ああ。だからもう止めてくれ。心臓に悪い。」



いつものように明るい声の彼女。

彼女を失うかと思った後だからか、
とても、愛おしいと感じる。




兎に角、Aが無事であることを噛みしめ、
彼女を、苦しいほどに抱き締めた。

18.巻き込まれ【M.T.C】→←【銃兎】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (76 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
242人がお気に入り
設定タグ:ヒプマイ , M.T.C , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

百面相(プロフ) - 0077さん» 了解しました!ネタ切れ&スランプだったので有難いです! (2019年3月21日 12時) (レス) id: 94aa678148 (このIDを非表示/違反報告)
0077 - リク応えてくれてありがとうございます!!めっちゃよかったです!!次のリクいいですか?ふと悲しいことを思い出して泣いてしまった。でお願いします!! (2019年3月20日 16時) (レス) id: 7491c8000a (このIDを非表示/違反報告)
百面相(プロフ) - 0077さん» 有り難うございます!書き途中のものを仕上げ次第、投稿していきますね! (2019年3月10日 12時) (レス) id: 94aa678148 (このIDを非表示/違反報告)
0077 - 初リク失礼します!!誘拐されて顔に大きな傷をつけられたら。 でお願いします!!更新頑張ってください!! (2019年3月9日 18時) (レス) id: 7491c8000a (このIDを非表示/違反報告)
百面相(プロフ) - 苺大福さん» いえいえ、こちらこそ見てくださって有り難うございます!残る二人も、順次公開していきますね! (2019年3月6日 21時) (レス) id: 06af4ddcfe (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:百面相 | 作成日時:2019年1月14日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。