ハマの人たちと。【ヒプマイ短編集】

【理鶯２】 ページ38

「っA、すまない、大丈夫か？」


男が地面に倒れ、動かなくなったのを確認してから、
理鶯は慌てた様子でこちらへ駆け寄ってきてくれる。


　『ぁ…理鶯…』


　「本当に、すまない。こんな傷を…つけさせてしまって…。

　 …手当をしよう。処置が遅くなってしまってはいけない。」


申し訳なさそうな表情で、こちらの様子を窺ってくる。

…この人はいつでも優しくて。
何も悪くないのに、何度も謝ってきて。

…嬉しいけど、温かいけど、
それが逆に申し訳なく感じてしまって。


　『理鶯…いいよ、大丈夫…』


　「しかし、震えているぞ。」


彼の手から逃れようとするものの、
その体を理鶯に抱き留められる。

当然のように、そんなことをしてくれる辺り。
…本当に、良い人だけど。

だからこそ、私でいいんだろうかと思ってしまう。
こんな、迷惑をかけるばかりの私で。


　『…ごめんなさい』


　「何故謝る…。恐らく小官が巻き込んでしまったことだ。
　 無事ならば構わないのだが、今回は…」


困ったように言いながら、
そこで言葉を濁し、私の頬にそっと触れてくる。

そこまで傷が深くないことくらいは、すぐにわかるはずなのに。
理鶯は、辛そうに目を伏せていた。


　「…すまない、手当をさせてくれ」


　『…うん』


ここで断っても、余計に困らせてしまうだけだろうし。
あんまり、私の思いだけ押し付けるのはよくない。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


　「…A、終わったぞ」


　『ん…ありがとう』


丁寧な手当を終えると、再びそっと包み込んでくれる。
本当に、この腕の中は落ち着ける。

…お母さん力…
素晴らしい包容力だね…。


　「…大丈夫か？小官がおぶっていこう」


　『え、ちょっ』


断る間もなく、体が持ち上げられる。
…ここは、思い切り甘えてもいいのかな。

…ていうか、おぶっていく、って言ったのに。
これ、姫抱き…


それでも、私には抵抗する気なんて起きず、
脱力して、理鶯の腕に身体を預けた。

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