〝平和〟が一番似合わない町【名探偵コナン】 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:10,725 hit

FILE.１　　平成のホームズページ1

*

　放課後。
　部活終わりの生徒や居残りから解放された生徒が帰路に就く中、私は体育館に近い廊下の壁に寄り掛かっていた。呑気に欠伸なんかをして、ボーッと壁に貼り付けられている掲示物を眺める。今月の行事一覧、我が高校の掲げる目標、帝丹大学学園祭の宣伝ポスター、等々。特に興味のある物がなかったので、再び欠伸をして視線を体育館に向ける。

「あ。明智じゃん。バーイ！」
「ん、また来週ー。」

「明智先輩、さよなら！」
「お疲れ様。」

　度々前を通って行く友達やら後輩やらに軽く手を振って、その背中を見送る。空手部の野郎達がやって来たのを見て、そろそろかな、と壁から背中を離した。肩に掛けていたフルートのケースがずり落ちない様に押さえて、体育館の様子をそっと窺う。
　体育館内は、随分と慌ただしかった。ポールの片付けをするバスケ部、コートを撤去するバドミントン部、そして、着替えの終わった空手部が働き蟻みたいに忙しなく走り回っている。ふと、丸めた空手着をぶら下げていた、私のお目当ての人物が私を見た。同時に、申し訳なさそうに眉尻を下げてこちらに駆けて来る。

「ごめーん！遅くなっちゃって。」
「全然平気。てか、部活の片付けとか大丈夫？」
「うん。使ったのマットだけだから。」
「そっか。じゃ、行こ。」

　私の親友で幼馴染である毛利蘭と私は肩を並べて廊下を歩く。

「にしても、空手部も大変だね。道場が大雨の所為で雨漏り、だっけ？」
「そうなの。しばらくは体育館の一角を借りるみたい。」
「傍迷惑な話だよねぇ。」

「音楽室は平気だったの？」
「うん。楽器も楽譜も皆無事。ただ、顧問の車のエンジンが死んだらしい。」

「今日の五時限目、眠くてヤバかった。」
「分かる！お昼ご飯の後って、眠くなるよね。」

　なんてくだらない会話をして帰路に就く。それが私達の日課のようなもの。

「あ、そうだ。A、新一知らない？」
「工藤？アイツねぇ……毛利と会うちょっと前に校門くぐってくの見たよ。」
「んもう！明日のことの話するから待っててって言ったのに！」
「明日？」

　憤慨した様子の毛利に続いて靴箱に向かうが、〝明日〟が気になって仕方がない。総動員で頭を働かせ、誰かが何か言っていなかったかと考える。……そういえば、鈴木が昼間なにか言ってた気が。
　『明日、蘭と新一君がデートに行くらしいのよ！あのふたり、ちゃっちゃと付き合っちゃえばいいのにね！』

　……これだ。