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子供の声、鳥の囀さえずり、遠くに聞こえる車のクラクション。
暗闇の中に、何一つ変わらない世界が広がっていた。
目を開けると、お手本の様な空が視界を青く染め上げる。
昼下がり。太陽はギンギラで、川から吹く風は涼しい。
遠くに見える江戸の象徴、ターミナルビルは、太陽の
「銀ちゃん酢昆布買ってヨ!」
「昨日買ってやったじゃねェか。そんなお金うちにはありませ〜ん」
「ふざけんな、パチンコ行ってたやつが何言うアル」
「ぐはっ!! タ、タップ!!!」
「神楽ちゃん! 銀さん落ちます。これ以上やったら銀さん落ちるから!!!」
「このクソ野郎はもう落ちる所まで落ちてるアルヨ。これ以上何処に落ちるっていうアルか!! 地獄か? 地獄に堕ちろこの野郎ォオオ!!!」
「その落ちるじゃなくてェエエエ! ストォオーープ!」
土手の上からそんな声が聞こえた。
声ですらキラキラしていて、振り向いて見つめたらそれだけで汚してしまうんじゃないかと思って、首の角度は変えずに、眼球だけをゆっくりそちらに向ける。
公園沿いの道を歩く見慣れた三人組。真っ白な着流しの背後から、伸し掛かる様に首を絞める赤いチャイナ服。それを止めようと手を伸ばす、青年になりかかった少年。
万事屋一行
自分の心臓が一際大きく跳ねる音が聞こえた。光がそこに収束し、呼吸は止まり、瞬きすら出来なくなる。
その姿は憧れそのもので、とてもとても眩しくて自然と目が細まってしまう。
現実に失望するなんて事はない。むしろ焦がれてしまうような煌きを持っていた。聞いているだけでささくれだった心が凪いでいくのを感じた。
ゆっくり瞼を落として、徐々に遠ざかる声を見送った。
その銀色が余りにも綺麗過ぎて、その周りを回る二人が余りにも温かくて、しまったと後から公開する。きっと私はその眩しさと温度を二度と忘れる事ができない。
私とは関係ない、ただ他人事のように傍観する。そう決めたのに・・・・・・ホンの一瞬だけ、綺麗過ぎて思わず手を伸ばしたくなった。
触れてはいけないと注意書きがしてある――モナリザに恋する意味を知った気がした。それか太陽に焦がれるイカロスだ。
蝋の翼しか持たない私は焼け落ちる前に、そっと目を閉じる。それでも瞼の裏に焼き付いたかのようにくっきり浮かぶ彼等に、今度は声に出してしまったと呟いた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーカラー
あずきいろ
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クミコさん - 更新待っております (2019年9月27日 7時) (レス) id: ad68fbe9cf (このIDを非表示/違反報告)
蓮佳(プロフ) - 凄く面白いです。リメイクできるまで、待ってます!更新頑張って下さい!応援してます!o(^o^)o (2017年10月8日 16時) (レス) id: d772084aa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カトレア | 作成日時:2017年7月16日 17時