〃其の二 ページ29
慣れた手つきで包帯を巻く。
とりあえず骨が折れていなかったのは不幸中の幸だった。
「どーだ？怪我の具合は」
『･･･まあ、それなりに』
いつの間にいたのか、ひょっこりと真上から私を見下ろしていた。
娘さんは手土産買いに行ったとのことだ。
一瞬驚くも、巻き終えた包帯を鋏で切って坂田さんに渡す。
『じゃあ私はこれで･･･ってわっ』
視界が真っ白に染まる。鼻孔を擽くすぐるのは橙色の夕日と･･･少し汗臭い坂田さんの匂い。
予想外の力で引っ張られ、飛び込んでしまった坂田さんの胸の中。引かれた腕の力強さに、私と坂田さんの性別の違いを改めて認識する。
そんな事を意識した途端、慌てて体を起こそうと背筋に力を込める。
けれど、起き上がろうとする私の努力は腰に回された腕に邪魔をされ、ついでに反対の手が頭を押さえつけるように髪をかき混ぜるせいで、ますますもって思考は混乱をきたす。
「髪ふわっふわだなーおい」
『さ、坂田さん？』
何！？ 冗談？ 嫌がらせ？？ 疑問符と感嘆符に侵された私が上げる声はみっともないほど上ずり、逃げ出そうとひねる体は上手く動いてくれない。
「それになんだ？獣臭い」
『！？』
スンと鼻を鳴らす音が耳の傍で聞こえた。本当何！？ 性的な嫌がらせ？
「･･･そっくりそのままお返ししますよ」
強張らせていた体の力を抜く。
腹筋だけで支える上半身は中々に辛く、姿勢を少し直し、迷った末、腕を銀さんの首に回す。
何か惑えばいいと仕返し的な物を考えたが、意に反して一ミリ足りとも動揺を見せない姿に、何か･･･尊厳的なものが死んだ気がした。
まあ、そんな物を見せられても困りはするのだが。
『何か言いたいことでもあるんですか？』
･･･このまま腕に力をこめれば息苦しさで腕をを放すだろう。もともと本気さえ出せば抜け出せるものなのだが、あまりにも関わりが出来たせいなのかその気にもなれない。
これだから、あまり関わりたくなかったのに･･････。
定春くんの匂いなのか、坂田さん匂いなのか、私の匂いなのか、もう誰のものかも分からなくなった匂いに包まれる。
「獣もいいけど、人間だって悪かねーぜ？」
声が振動し私の内側に直接響く。そうあからさまでは無かったけれど、避けてしまったのは確かだったから、聡いこの人が気づかない訳はないのだ。
･･･あーあ、坂田さんの手口にまんまと引っかかってしまった。
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ラッキーカラー
あずきいろ
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クミコさん - 更新待っております (2019年9月27日 7時) (
レス) id: ad68fbe9cf (このIDを非表示/違反報告)
蓮佳(プロフ) - 凄く面白いです。リメイクできるまで、待ってます！更新頑張って下さい！応援してます！o(^o^)o (2017年10月8日 16時) (レス) id: d772084aa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カトレア | 作成日時：2017年7月16日 17時
