好物頂上決戦 【角名 倫太郎】

この感情のせい。 ページ36

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角名side






腕を掴んでいた手の力が抜けて、ずるずると落ちていく。


見れば、すうすうと寝息を立てている(人1)。








「…え、このタイミング？」






思わず苦笑いしてしまった。

いやこれはするしかないだろ。





ベッドに落ちた手をもう一度取って、

優しくそっと、指を絡ませる。








「いつから変わったんだろうな」









昨日のあれ。止めるつもりだった。

やめろ、それ以上は。心ではそう思っていたのに。







心臓が跳ねた。

薄暗い部屋でも分かる、紅潮した頬。少し潤んだ瞳。


からかってるの、と言葉を紡ぐ薄い唇。






あれ、(人1)ってこんな、 "女" だっけ。







あの時、俺は動揺を隠すのに精一杯だった。







幼なじみ。

小さい頃からずっと一緒。まあ1回離れはしたけど。


幼少期は風呂だって一緒に入ってたこともあるし、

些細なことまで知っている。




どこまでいっても、幼なじみは幼なじみ。

感情の変化はない。





…はずだったのに。







繋いでいる手と反対の手で、(人1)の頬をつつく。

ふ、と笑みが溢れる。





触れたい、と。

前は思うこともなかったのに。




憎いという感情より、



守りたい、愛おしいと。そう、思う。









「角名〜？開けてええ？開けるで？イチャコラしてへんよな？」

「オイ離せって…」





シャッと閉めていたカーテンが開き、

侑と、なぜか佐久早の2人が立っていた。






「なに？」

「もう練習始まるから呼びに来てん。(人1)は？」

「爆睡」

「チッ…ただの寝不足か」





佐久早は侑に無理矢理連れてこられたようだった。

近くにいたらしい。





俺は(人1)の手を、そっと離した。






「…お前、コイツがふらついた時、俺が手伸ばしてたの分かってて自分の方に引き寄せただろ」

「…気付いてたんだ」

「フッフ。やっぱりなぁ」







ところで、と侑が続ける。


なぜか、言いたいことが分かってしまう。








「(人1)のこと好きなんやろ？」

「昨日も聞いたくせに」

「ええから」







分かっている。




侑の(人1)への視線に苛立ったのも、

1人で佐久早の元に行かせなくなくてついて行ったのも。






全部、









「うん。好きだよ」







この感情のせい。

昨日は否定したけど認めるよ。








侑と佐久早はニヤニヤしだした。





ムカつく。









「…ねえいつまでセミの抜け殻つけてんの？」

「佐久早それ早く言えよ…」

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