【#コンパス】真のあなたと型紙のあなた【逆ハー気味】 (ページ3)

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あれから、あの謎の空間にいた白い機械が私の元へやってきて、

どう頑張ろうと私には理解し難い、奥が深すぎる説明を受けた。

どうやら私はこの世界のヒーローとして戦わなければいけないんだそう。

話はこれだけではないのに、この時点で既に合点がいかない。

そしてこの場所は、この世界で戦うヒーローたちのホテルのようなものであり、

皆で共有して使っているんだそう。

私は先程の白い機械にホテルとやらの個室へと案内され、

今まさに、その個室の扉を開けようとしている所だ

ここに辿り着くまでに、何回か他のヒーローらしき人とすれ違ったが、

この世界に関して何も理解してない上に、少し恥ずかしくて話しかける事は出来なかった。

『よいしょ…っと、』

いざ部屋の扉を開けようと、重そうな扉を力いっぱいに押す。

するとその扉は見た目に反して案外軽かったようで、

勢い余って限界まで扉が開いてしまった。

『わあ…なにこれ…』

それと同時に私の視界はたくさんの貼り紙で埋め尽くされる。

惹き付けられるように部屋の中まで足を踏み入れると、

不思議と物凄い安心感を覚えた。

そのまま部屋の中心まで行くと、ボロボロになったぬいぐるみが倒れていた。

白くて長い髪とまつ毛、そして青い瞳

どこか悲しそうな表情をしたぬいぐるみ。

何故か純白の中に一束だけ真っ黒な髪が混ざっていた。

何かに誘われるようにそのぬいぐるみを抱えてやると、これまた不思議と安心感を覚えた。

たくさんの紙が貼られている壁に目をやると、

全ての紙に"お父さん"という言葉が書かれていた。

ひとつは、"お父さんを探しています"

もうひとつは、 "お父さん募集中"

他にも、"私のお父さんを返せ"、

"お父さんに全てを捧げます"、

"お父さんは私を見捨てない"

"私の大好きなお父さん" …

種類は様々だが、やはりどの紙にも"お父さん"という言葉が書かれている。

紙一枚一枚に目をやる度に、頭が痛くなりそうだ。

『おとう…さん…？』

私のお父さんはどんな人だったっけ

そもそも、私にお父さんなんていたっけなぁ…

呑気にそんなことを考えていると、

これ以上は考えさせまいと言うかのように少しずつ睡魔が襲ってくる。

私はそのまま部屋の中心で横になり、ゆっくりと目を閉じた。

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…扉は限界まで開いたままになっていたが、

当然そのことに気付くはずもなかった。