誘惑欲張りJEWELRY『3』

人望の差云々 ページ15

撮影が開始されてから暫く時間が経ち、お昼に差し掛かった頃であった。

「皆さん、水分補給は小まめにしてくださいね。」

「いや、澄空さんもですからね?!」

「ありがとね、Aちゃん!」

　撮影中、日に当たり汗をかいた皆さんにドリンクを渡す澄空さん。自分の事を後回しにしがちな彼女を心配しつつ、彼女の手伝いに奔走する。

「後、ナギくん、ちょっと体調悪そうだから休憩ね!」

そこで目に留まったのが、HE★VENSの最年少であり宇宙一可愛いのが売りであるアイドル、帝 ナギくん。

　長時間に渡る撮影の所為か、顔色が優れない様子であった。

「えーッ、僕まだ大丈夫なんだけど!」

　自分が今、どれだけ顔色が悪いのか自覚していないらしく、大丈夫だの一点張りで中々休もうとしない。

　嗚呼、自分の体調が分からずに無理する人ってよく居るな。と思いつつ、嫌がる彼を引っ張り日の照る場所から涼しいパラソルの下へと移動させる。

「ちょっと離してよ! 僕、大丈夫だってば!」

「そうやって、自分の事を大丈夫だって言う人ほど信用ならないんですよ。」

　イヤだイヤだと暴れるナギくんに手を焼いていると、彼と共に撮影をしていた美風先輩と不動さんがやって来た。

「体温がさっきよりも高いし、顔色も良く見れば悪い。ここはAの言うことを聞いて、大人しく休んだ方が良いね。」

　何処か機械的で感情は篭っていないものの、ナギくんを休ませようと背中を押す美風先輩。

「無理は良くないよ! スタッフさん達に伝えとくから、暫くゆっくり休もうか。」

然り気無いフォローを入れてくれる不動さん、2人に感謝しつつ私はナギくんを横にさせる。

「もう、大丈夫なのに………。」

　ナギくんは口を尖らせ、不満そうにするも年上2人に説得され渋々大人しく従った。

　あれ、私も一応年上だと言うのに何だこの態度の差は! 嗚呼、人望の差と言うやつか。

その考えに至り、自分が如何に人望が無いかを目の当たりにし地味に凹みつつ彼の看病へと移った。

「はい、まず首を冷やしましょうか。」

　熱冷ましシートを取り出し、正方形に小さく切ってから彼の細く白い首筋に貼り付ける。

「こう言うのって普通、額に貼るものじゃないの?」

「熱を取る時は首からだって、前に澄空さんが言ってました。」

アイドルと言っても人間。もし皆が体調を崩す非常事態が発生した時の為、澄空さんから色々と教えてもらっていた事が今役に立った。

　後で彼女に御礼を伝えに行こう!

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