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月恋 第188話 「自分勝手な嘘は人を傷付ける」 ページ45

「そう言えば夜さん、もう帰って来てたんですね」

私と同日に実家へ帰った夜さんがもう此処に帰って来ていたことに今更気付く。

「家族との時間はしっかり過ごしたから、陽と今度はここにいる第2の家族とゆっくり過ごそうって話になって、帰ってきたんだ」

夜さんは私の問いに答えながら、私の赤く腫れた頬にぴとり、優しくガーゼに包んだ保冷剤をくっつけてふんわり柔らかく微笑んだ。

第2の家族、それはプロセラの皆のことであり、グラビの皆のこと。そこに私も入っていたら良いのにな、なんて贅沢で烏滸がましいことを考えていれば―――

「Aちゃんも大切な俺達の家族だってこと、絶対に忘れないでね」

柔らかい笑みと頬に添えられた夜さんの手はそのままに、真っ直ぐな強い光を孕んだ彼の瞳に自分の姿を捉えられ、まるで私の脳内を見透かしたかの様にそう告げられた。
大切な家族、その言葉にトクリッと心臓が高鳴った。言われ慣れないその言葉がやけに私の胸の奥底を擽り、照れ臭いと感じる。

頬をほんのり赤く染まらせ、その照れ臭さから顔を俯かせる私に対して夜さんはだからね、と話を続ける。

「その大切な家族に嘘をつかれたり、本当に言って欲しいこと、相談して欲しいことを誤魔化されるのは凄く傷つくんだ」

夜さんの口から紡がれた虚を衝く様なその言葉に、がばりっ、勢いよく俯いていた顔を上げた。そして先程まで優しい笑みを浮かべていた彼の顔を見て、己の目を思わず見張る。

顔を上げた瞬間、強く自分の唇を噛みしめ、目を伏せて今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべた夜さんが私の視界に入ってきたのだ。

違う、違う。私は夜さんにそんな顔をさせたい訳じゃない。彼をこんな風に、傷付けるために嘘を吐いた訳じゃないのに。結局、私は必死に自分のことを隠そうと、自分のことだけしか考えずに、己の身勝手な嘘で大切な人を傷付けてしまったのである。

本当に、馬鹿みたい。

月恋 第189話 「天使と悪魔の囁き」→←月恋 第187話 「突き刺さる痛み」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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