口は災いの元 ページ47
翌日、私の心持ちは何処と無く軽く、何時もは長いと感じる学校への道のりも、暗い気持ちで歩くことは無かった。
何時もよりスッキリした目覚めで、早めの登校を果たしたのである。
「おはようございます、斎藤先輩。」
「おはよう柊木。今日は珍しく早いんだな。」
2年生の斎藤一先輩、沖田先輩と同じく剣道部のエースで格好良く真面目な青年だ。
「まあ、何時も遅刻ギリギリは不味いかと。」
「そうか。これが継続できると良いな。」
「流石斎藤先輩、痛いところ突いてきますね。」
毎回朝はギリギリまで睡眠を取り、夜遅くまで作曲しているから、登校は遅刻ギリギリセーフの時間となる。だからか、斎藤先輩は私に手厳しい。恐らく、風紀委員の中で私はあの遅刻魔である藤堂先輩と共に、ブラックリストに入れられているのだろう。
「お前がこんな早いなんて、明日は雨だな。」
名簿を片手に、人を小馬鹿にした様な笑顔を浮かべるのは南雲くん。
「大丈夫、南雲くんが人に毒を吐く限り、明日は晴れだよ。」
「どういう意味だ?」
「詰まり、南雲くんがひねくれている限り天気は必ず晴れ!!」
「堂々と人をディスるな女好き変態馬鹿女!」
「誰が女好き変態馬鹿女だ!女顔ひねくれシスコン野郎!」
「いい加減にしろ。」
不毛な言い争いが続き、とうとう痺れを切らした斎藤先輩が私達に強烈な手刀を頭に叩き付けた。
「いでッ!」
私は手刀を受けた部分を両手で押さえ、「すいませーん。」と適当に謝り、南雲くんは私と全く同じポーズをしながら斎藤先輩を鋭い目付きで睨んでいた。
「そんな事しても、可愛いだけだよ。」と冗談混じりに言うと、斎藤先輩の手加減されたチョップとは比べ物になら無い位強烈な拳骨が私に降り下ろされ、私は更に頭を抱えることとなってしまった。
己の口の悪さを今日ほど恨んだことは無い。
口は災いの元とは、これまた然り。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時