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お行儀の良い曲 ページ39

その頃、Aが出て行ってしまったQUARTET NIGHTの面々はそれぞれの部屋へと戻っていた。

「ッたく、好き勝手言いやがって。」

 黒崎は怪訝そうにさっきAが捨てて行ったゴミ箱から楽譜を取り出し、自分の机の上に並べ眺める。そして先日来たばかりの作曲家、柏木 Aの顔を思い浮かべ、「はッ」と鼻で笑う。

 やっと七海春歌と言う最高にRockな作曲家が現れたと言うのに、何故今さら実力の定かではないひよっこ作曲家を自分達に付けなければならないのか。彼はそれが理解出来ず、苛立ちを隠せずに居た。

「………………」

「黒崎さん、どうかされたんですか?」

 暫く楽譜を眺めていると、同じ部屋の聖川と神宮寺がレッスンから帰ってきた。

「お前等、この曲見てどう思う。」

 差し出されたのは音譜が連なり出来上がった楽譜。

 普段1匹狼で中々話し掛けてくる事のない黒崎が、自分達に質問を投げ掛けてくるのはもっと珍しいと聖川と神宮寺、後輩二人組が顔を見合わせる。

そして聖川が「失礼します」と楽譜を受け取った。

 クシャクシャになってしまった楽譜を眺め、メロディーを脳内で再生していく。頭の中で完成された曲は、見事に1つの綺麗な音楽を奏でた。

「綺麗で整っていますが、何処か機械的な感じがします。」

しかし、何か違和感があると二人は頸を傾げた。

「確かに、枠に嵌まった行儀の良い曲だ。面白味が無いね。」

「お前等でも分かるのに何でアイツは気付かねェんだか。」

 黒崎はガシガシと頭を乱雑にかく。

「もしかして、此れは柏木が?」

「嗚呼。」

 不機嫌丸出しの黒崎は彼等から視線を外した。

「楽譜をグシャグシャにしたのは彼女かな。また喧嘩したの?駄目だよランちゃん、レディには優しくしないと。」

「おい神宮寺、実際見てもいないのに黒崎さんにそんな言い方は失礼だぞ。
………確かに黒崎さんの言い方は刺々しいですが、売り言葉に買い言葉。直ぐカッとなってしまった柏木にも非はあるかと。」

「おい真斗、全くフォローになってねェぞ。」

 口にも態度にも出さないものの、後輩の言うことは一理あるかもしれないと考える黒崎であった。

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時

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