完璧なアイドルスマイルで ページ38
「ああ、ヤマトも一緒に寝ちゃったんだ。」
ピッタリと彼女の背中にくっついて離れないヤマト。そんな姿に夜は思わず笑みを溢す。
海は何時も一緒なヤマトと涙が、さっき共に居なかったのはこういう理由があったのだと納得する。
彼女に掛けられている毛布は、涙が気を使って掛けたものらしい。
弟の様に可愛がってきた涙の成長と、優しさに嬉しくなり、海の胸の内はほっこりと温かくなる。
床板の上では痛いだろうと、海が彼女の小さな体を抱えソファまで移す。
抱えた時に触れた彼女の体は小さくて軽くて、柔らかい。その上、石鹸なのかは分からないが柑橘系の爽やかな香りが彼の鼻腔を擽った。
「ふぎゃッ!」
ソファに彼女を移して数分、ゴッツンと鈍い音ともに尻尾を踏まれた猫のような悲鳴が聞こえてきたのだ。
どうやら、寝返りを打とうとして、ソファから転がってしまったらしい。
「んー、いまなんじー…………」
寝惚けて呂律のはっきりしない口で呟き、自分のポケットから携帯を取り出す。そして彼女は一気に青ざめた。
「もう20時じゃん!え、ど、どうしよ。右京くんに怒られる!」
右京くんとは一体誰なのか、彼女の口からビックリ箱のピエロの様に飛び出てきた男の名前に、涙は無意識に眉間に皺を寄せた。
「あ、あの、長いことごめんなさい!ありがとうございました、これで私は失礼します!」
「待って。」
早口で捲し立てるように彼女は挨拶をし、そのまま出ていこうとしたのを夜が止める。
「外はもう暗いし、女の子一人じゃ危険だよ。送ってくね。」
「あ、いえ、そんなアイドルである長月さんをこんな夜に出歩かせる訳には。」
普通逆だろと思わせるほど何処かズレた男前な回答に、夜は苦笑い。
「元はと言えば、うちのリーダーが君を巻き込んじゃったんだから。此の位させて?」
完璧なアイドルスマイルで夜に言われてしまい、Aはもう返す言葉が出てこなかった。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時