第一印象大切 ページ4
日向先生にマスターコースの広すぎる上に、音楽に関する設備が充分過ぎる程整った寮内を一通り案内されてから、広間へ行く。
其処にはTVの画面越しで見た事のある人達が、数人集まっていた。
此の人達が私の先輩なのだろうか。
寮内に入った時以上に早く、加速していく心拍数に、高鳴る胸を押さえ、その場の空気を大きく吸う。そして口から一気に、緊張を一緒に流すようにして息を吐き出す。
大分心臓の音が落ち着いたと同時に、直ぐ様日向先生の後を再び追い掛ける。
数えて、ざっと11人のイケメンと1人の可愛い女の子の前まで、日向先生は歩み寄って足を止めた。
「揃ってるな。今日はお前達の後輩を紹介する。」
よく通る日向先生の声が、広間全体にキーンと響き渡る。そして先生に、そっと背中を押され前に自然と足が動く。
コツンッと靴音を鳴らし、先輩12人の前へと出る。
さっきまで日向先生に向けられていた視線が、一気に此方へと集中する。
それをヒシヒシと肌で感じ取ったのか、さっき落ち着かせたばかりの私の心臓が、再び大きく弾み出す。
ゴクリ、音を鳴らして唾を飲み込み、口を開く。
「これから、マスターコースで勉強させて貰う事になりました、柊木 Aです。これから柏木 Aと言う名前でプロの作曲家を目指していきたいと思っています。何かと至らない点が多々あると思いますが、宜しく御願いします。」
真っ直ぐに前を見詰め、深々と頭を下げた。
上手く言えただろうか、言葉に間違いは無かっただろうか。
色々不安で一杯になるが、パチパチパチと手を叩く音が微かに聞こえて顔を上げる。すると、あの紅一点である可愛い女の子が、にこやかに手を叩いてくれていた。そしてその子に釣られて、隣に並ぶ7人の男の子達も拍手をしだす。
私はホッと胸を撫で下ろした。
良かった、最初から拒絶するような怖い先輩ではなくて。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時