誘惑欲張りJEWELRY 『1』 (ページ30)

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お願いがあるんだよページ30

目玉が飛び出るほど高い外国の高級車に有無を言わさず乗せられ、今人気沸騰中のアイドルグループ「Procellarum」のリーダーである霜月隼さんに誘拐されました。

　どうしてこうなった？

「あの、私は何処へ……」

　隣で意気揚々と鼻歌を歌う憧れの彼、隼さんに恐る恐る問い掛ける。

「んー、ツキノ寮かな？」

「嗚呼、ツキノ寮ですか……なるほどーって、はぁ？！」

　ゴンッ

　驚きのあまり、後ろに後退って車の窓ガラスに後頭部を強打。鈍い音と共に、己の頭にじわりじわりと痛みが広がっていく。

　自然な感じでサラリと「ツキノ寮」と言うから、うっかり適当に聞き流すところであった。

「おやおや、大丈夫かい？」

「だ、大丈夫っす。」

　打った部分を両手で押さえ、目にうっすらと浮かべる私は何処からどう見ても大丈夫ではない。

　妖艶な笑みを浮かべ、さらり、私の肩まで伸びた髪を手で掬う。

　端正な顔が近付いてくる。

　大ファンである隼さんに髪を撫でられるのも、間近で彼の顔を見るのも何もかもが夢みたいだ。

　私の心臓はさっきからドックンドックンと鳴りっぱなし、打った頭もだが私の心臓も大丈夫ではない気がする。そのうち爆発するんじゃないかと怖くなるほど弾んでいた。

「そんなに緊張しなくても良いのに。」

　フッと微笑みかける。

　もう其の笑顔だけでも眩しくて、キャパオーバーを起こして気絶しそうです。否、気絶じゃなくて天に召されそうと言った方が正しいかもしれない。

「僕はただ、君にとあるお願いをしたいだけだよ。」

「とあるお願い、ですか？」

　あの人気アイドルグループのリーダーであり、才色兼備な魔王様である隼さんが、作曲家だが、まだまだ駆け出しで一般peopleな私にお願い？

　一体何のお願いなのだろうかと、思わず身構えてしまう。

「僕達、プロセラの次回の新曲を君に作ってもらいたいんだ。」
　
　其れは不思議な雰囲気を持った隼さんの瞳が、妖しく光った瞬間だった。