誘惑欲張りJEWELRY 『1』 (ページ28)

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才能があるかないかページ28

「こんちくしょうッ！」

　正論を言われ、音楽の才能が無いと、自分が作曲を担当するアイドルグループの1人に言われ、頭に来て咄嗟に飛び出てきてしまった朝日奈家の帰り道。

　私は路地裏へと入り、やりきれない思いと頭を両手で抱え、暗い気持ちを振り切ろうと叫び出す。

「私に才能が無い？先輩に言われたくないんだよ！」

　確かに春歌先輩の曲には敵わない何かがある。昨日、彼女が作った曲を聞いてそう実感した。

彼女の曲には、人の心を明るくさせる素敵な力を秘めているのだ。私の曲なんて、彼女の曲の足元にも及ばなかった。

　何かが足りないとは分かっている。けれど、その何が足りないのか、何がいけないのか自分では気付くことがいまだに出来ていない。

それが悔しくて仕方がない。

今現在、アイドルとして伸び悩んでいると彼等に暴言にも似た言葉を吐いてしまった。だが、彼等は私が専属の作曲家となるよりも前にアイドルとして華々しくデビューを飾り、芸能界で成功しているだけあって、決して本人達には言わないが実力は高く、才能も本物である。

そんな人達の作曲を、まだデビューしたばかりである私が担当となるのは大きなプレッシャーでもあるのだ。

「確かに、音楽を作るよりも役を演じる方が楽しいけどさ。」

　久し振りに芝居と言う物に触れ、実感した。

　私が音楽を心から愛していない、口先だけの「好き」を言っている事も分かっている。

　どうして私は好きになれないのだろうか、何故自分で納得する様な曲が作れないのかと悩む時がある。

現に散々叫び終わった今、絶賛お悩み中だ。

「あー、もう私はどうすればっ！」

　先輩方にも考え無しに言いたい放題やってしまったし、明日からどうすれば良いのやら。

　再び頭を抱えだしたその時―――――

「Procellarumの新曲？」

私の大好きなProcellarumの歌が何処からともなく流れ出したのだ。