ドラマの練習 ページ24
「それ、誰かの台本ですか?」
ドーナツをST☆RISHの人達とのんびり食べていて、ふと目に写ったのは机の上に置かれた1冊の台本であった。
「ああ、これは俺のだな。」
「聖川先輩、何かドラマでも?」
「マサはね、時代劇の主役やるんだよ!」
「お、おい、一十木!」
一十木先輩は元気よくそう説明してくれたかと思うと、聖川先輩の手から台本を奪い、私に見せてくれた。
私はパラパラとその台本を捲り読み、大体のあらすじを読み取っていく。
「あ、時代劇でも恋愛がメインなんですね。」
と或る城のお姫様と、その城と敵対する城主の息子の悲しく切ない恋物語が鮮やかに描かれた台本。まるでロミオとジュリエットを、日本バージョンにしたかのようなお話しである。
これは今時の若い人向けの時代劇で、ラブシーン満載だ。しかも、しっかりキスシーンまでついている。
「そこが問題なんだよな。」
と本人でもないのに、とても困り顔の来栖先輩。
「どうかされたんですか?」
「こいつはね、滅法恋愛ものに弱いんだ。」
神宮寺先輩は、聖川先輩をからかうかのようにケラケラ笑う。
女慣れしてそうな神宮寺先輩は兎も角、純情そうな聖川先輩には恋愛ものは難題だろうな。しかも演じる側となると、その難題はさらに難しくなる。
「神宮寺、お前と違って慣れてないだけだ!け、け、決して弱いわけでは……」
否定しているようだが、声が震えている時点で自分が弱い事を更にバラしている様にしか思えない。
「あ、そうだ! 先輩方が帰ってくるまで、Aちゃんに練習を付き合って貰ってはどうでしょう!」
四ノ宮先輩が、これぞ名案だと言うばかりにポンッと手を叩く。そして彼等の視線が一気に此方に向いたかと思うと―――
「お願い柏木、マサに協力してあげて!」
「このままじゃ、主役降ろされちまう!」
「頼めませんか? 何分、私の女装では嫌な様で。」
全然関係ないメンバーの先輩達から、食いつかれるかのようにお願いされた。
一ノ瀬先輩の口から耳を疑うような単語が出てきたが、其処は敢えてスルーしておこう。
「え、私はちょっと……」
「私からもお願いします!」
「分かりました、やりましょう!」
「この態度の差!」
断るつもりだったが、春歌先輩からも頭を下げられ、引き受けるしか道はなくなってしまった。
芝居は考えるのではなく、感じて演じるものである。→←ドーナツ
211人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時