お見通し ページ22
「あ、千鶴ちゃん見てみて！ 」
お昼休み、千鶴ちゃんと学校の中庭でお弁当を食べながら見ていたTwitterで発見したのは、「ツキウタ。」の新曲が出るという情報だった。
ツキノ芸能プロダクションの最初に立ち上げられた企画、「ツキウタ。」
12ヶ月をモチーフにした歌を、2つのアイドルグループが歌っていく企画である。
12〜5月までの歌を担当する人達で作られた「Six Gravity」と6月〜11月までの歌を担当する人達で作られた、「Procellarum」だ。
私はこの「ツキウタ。」のファンなのである。特に「Procellarum」こと、略してプロセラのリーダー、霜月 隼の大ファン。ファンクラブにも入っている程である。
「Aちゃんは本当にツキウタ。が好きなんだね。」
テンション高く、今回の新曲に関して熱く語り出す私に温かい眼差しを向ける千鶴ちゃん。まるで、保護者のようだ。
「霜月 隼の声が好きなんだよね？」
「そうそう！何時か、私が作った曲を歌ってほしい。」
事務所が違う上にライバル同士。しかもまだまだ無名のひよっこ作曲家だから、それは不可能だろう。けれど、妄想するだけならばタダである。
「何の話し？」
「ひっ！」
私と千鶴ちゃんで一生尽きる事のないツキウタ。の話題で盛り上がっていたら、突然沖田先輩が現れた。
余りにも突然顔を出すものだから、危うく携帯を放り投げるところであった。
沖田先輩に、ツキウタ。の公式Twitterを見られないように直ぐに携帯を閉じる。
2年生の剣道部エースで、イケメンの沖田総司先輩は他校の女子からは人気だが、性格はドS、人をからかうのが得意な厄介な人物である。
「いえ、特に何も。」
「ふーん、特に何も、か。」
沖田先輩は、私の手元にある携帯へチラリと視線を向ける。
これは、絶対勘づいているパターンか？
それは困る。
事実だが、沖田先輩にミーハーだと思われるのは何だか癪だ。この場をどうにかして誤魔化さねば！
そう意気込んだ時―――
「おーい総司、焼きそばパン売り切れちまうぜー！」
遠くから、2年生の小柄だが中々格好良い、千鶴ちゃんの幼馴染み、藤堂平助先輩が沖田先輩を呼ぶ声が聞こえてきた。
「じゃあね、千鶴ちゃん、Aちゃん。」
それを耳にし、ようやく去っていくと思ったら、
「あ、Aちゃんがツキウタ。の大ファンだって事、誰にも言わないから安心して良いよー。」
既にバレていた。
恐るべし、沖田先輩。
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2017年5月29日 10時
